研究課題/領域番号 |
22KJ0458
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補助金の研究課題番号 |
21J20135 (2021-2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2021-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分47010:薬系化学および創薬科学関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
栗原 崇人 千葉大学, 大学院薬学研究院, 特任助教
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2023年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2022年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2021年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
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キーワード | 配位子 / 光反応 / 可視光 / パラジウム / 計算化学 / ホスフィン / 遷移金属触媒 / ラジカル / TD-DFT |
研究開始時の研究の概要 |
可視光エネルギーを利用した光反応が、環境調和性の高い有機合成手法として注目を集めている。光触媒反応を開発するためには可視光の吸収が可能な触媒が必要となる。本研究では、可視光を吸収し遷移金属に配位する新規配位子を量子化学計算によりデザインする。デザインした配位子は高いエネルギーを有する可視光を吸収することで、配位先の遷移金属を活性化することが期待される。そこで、様々な遷移金属触媒の活性化について検討することで、活性化された遷移金属触媒による一電子反応の開発を行う。
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研究実績の概要 |
研究計画に基づき、可視光活性型ホスフィンリガンドを用いた遷移金属触媒光反応の開発研究に取り組んだ。その結果、前年度に開発した可視光活性型ホスフィンリガンド(以下、Ligand A)を用いることで、0価パラジウム錯体を活性種としたパラジウム触媒光反応を開発した。また可視光照射による0価パラジウム錯体の活性化機構を解析した。 まず時間依存密度汎関数に基づく理論解析を実施したところ、Ligand Aがパラジウムに配位した0価パラジウム錯体において、可視光を吸収し励起したLigand Aに対するパラジウムからの一電子移動が予測された。予測された活性化機構をもとに触媒量のパラジウムとLigand Aを用いて、種々の反応剤や反応条件を検討したところ、青色LEDライトの照射下において、アルキルハライドやアリールハライドを基質としたカップリング反応が進行した。本反応はパラジウム触媒を除くとほとんど進行せず、またLigand Aを添加することで既存のホスフィンリガンドよりも収率が大きく向上した。したがって可視光活性型リガンドの添加により0価パラジウム錯体が活性化されていることが示唆された。続いてLigand Aの添加効果を検討するため、分光学的解析を実施した。その結果、0価パラジウム錯体と攪拌した際にLigand Aの消光が観測された。Ligand Aは0価パラジウム錯体と攪拌することでパラジウムに配位することを31P NMRにより確認しているため、パラジウムへの配位が効率的な消光に繋がっていると考えられる。本結果は可視光活性型リガンドが効率的にパラジウム錯体を活性化させていることを示唆する結果であり、本研究課題のコンセプトを支持している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通りに研究が遂行できているため。 計画通り、開発した可視光活性型ホスフィンリガンドを用いた遷移金属触媒光反応を開発し、0価パラジウム錯体を活性種とした光反応を開発した。この際に、密度汎関数法に基づく理論計算を活用することで、可視光照射下における0価パラジウム錯体の電子的挙動を解析した。本解析結果に基づき励起状態の0価パラジウム錯体の機能を予測することで、効率的にパラジウム触媒光反応の開発を達成した。またアルキルハライドとアリールハライドを用いた異なるクロスカップリング反応を開発し、可視光活性型リガンドの汎用性を示した。さらに分光学的解析により、理論計算を支持するデータを得ることにも成功している。このように、研究計画通り可視光活性型リガンドを用いた遷移金属触媒光反応の開発に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究では、パラジウム触媒光反応の開発に焦点を当てて反応開発に取り組んできた。可視光活性型リガンドを用いる本研究コンセプトでは可視光エネルギーを吸収するのはリガンドであるため、様々な遷移金属触媒の活性化に利用できるポテンシャルを秘めている。そのため、今後はパラジウムとは異なる遷移金属の光活性化を達成することで、可視光活性型ホスフィンリガンドの一般性を拡張する予定である。 遷移金属触媒は金属種によって異なる性質を持つため、その遷移金属に適したリガンドを理論計算をもとにデザインし、実際に化学合成する。合成したリガンドの化学的・物理的性質を解析することで、計算予測との整合性を検討する。続いて可視光照射下での金属錯体の活性化機構を予測することで、効率的に他の遷移金属触媒光反応の開発に取り組む。類似した遷移金属触媒であったとしても、適した反応の種類や反応機構が異なる場合があるため、金属のスクリーニングについても併せて検討していく。
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