研究課題/領域番号 |
22KJ0468
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補助金の研究課題番号 |
22J01603 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分80030:ジェンダー関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
西井 開 (2023) 千葉大学, 社会科学研究院, 特別研究員(PD)
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特別研究員 |
西井 開 (2022) 千葉大学, 社会科学研究院, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | DV / 加害者臨床 / ホモソーシャル / 性暴力 / 暴力連続体 / マイクロアグレッション |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、男性のストーキング行動およびDVのメカニズムとその他の社会問題(ハラスメント、ひきこもり、社会的孤立)との関連性の把握、およびストーキングおよびDV問題の解決を目指した制度の実装、加害者臨床の発展を目指す。具体的な作業として、(1)男性の加害に関する先行研究および各国が実施す る公共政策や臨床実践のマッピング、(2)加害男性へのインタビュー調査、および事例調査、(3)オーストラリアおよびニュージーランドにおけるカウンセリング機関での研修参加と参与調査、(4)フィールドワークとインタビュー調査にもとづく現代の日本男性の加害行動のメカニズムと新たな対策の可能性の考察、の4つの作業を行う。
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研究実績の概要 |
2023年度は、ドメスティック・バイオレンスやストーキングといった親密な関係間におけるジェンダー暴力の事例データの収集と、脱暴力に向けた臨床アプローチの理論化を進めた。 第一に、申請者が臨床心理士として実践しているDV加害者臨床の現場をフィールドとして、面接やグループワークの経過を通して、クライエントである加害者男性による暴力のメカニズムと脱暴力のプロセスにかんして、逐語録などにまとめて事例データを収集した。 第二に、脱暴力をサポートするための臨床アプローチのノウハウについて、諸外国で実施されている実践を視察・研修参加を通して洗練化を進めた。具体的には、先住民族に対話実践を取り込んだニュージーランドの心理実践、およびオーストラリアで長らくナラティヴ・セラピーの実践を蓄積してきたDulwichセンターのワークショップに参加した。 第三に、臨床アプローチのあり方について、これまでの認知行動療法をベースとした加害者カウンセリングとは異なる、クライエントの社会的文脈を重視したナラティヴ・セラピーに基礎を置く新たな手法の理論化を試みた。これは『加害の地図を描く:DVに作用する男性性を可視化する臨床実践』として論文にまとめた。 第四に、加害を引き起こす社会的要因についての分析を進め、社会に埋め込まれた男性に対する免責の構造、性差別、ホモソーシャルなどについて、研究会発表および論文執筆を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DVやストーキングといったジェンダー暴力の問題を男性性の視点から解明し、問題解決まで結びつけるという本研究課題の方針に対し、本年度は暴力のメカニズムの把握および臨床アプローチの理論化まで進むことができ、ある程度満足のいく進捗が見られている。しかし、ストーキングにかんしてはまだ十分なデータが集まっているとは言い難い。当初、①親密ではない関係性におけるストーキング、②交際関係の中で生じるストーキング、③離婚後発生する深刻なストーキングといういくつかの層のインフォーマントからデータを収集すると予定していたが、未だ②にかんしては十分なインフォーマントがおらずにデータを得られていない。そのため、来年度は現在申請者が関わる加害者臨床の現場で若者を対象としたカウンセリングを実施することで、データを収集していく。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、大きく3つの形で研究成果を発表することを目標とする。 第一に、上述した3つの層のインフォーマントから収集したデータをもとにした、ジェンダー問題としてのストーキングにかんする論文の執筆を行う。ストーキング経験のある若年男性のデータを収集して分析し、最終的に取りまとめた論文を発表する。 第二に、日本におけるジェンダー暴力にまつわる臨床実践の視察を行う。とりわけDVの領域では加害者臨床の実践が広がっているが、その内実は十分に明らかになっていない。とりわけ沖縄などの地方都市における男性の暴力は、申請者がフィールドとする関西の都市圏で出現する暴力とは異なる様相と持つことが予想される。そうした暴力に対してどのようなアプローチがありうるのか、現地の加害者臨床の専門機関を視察し、申請者が取り組むアプローチと比較検討することで、アプローチのより綿密な理論化を目指す。 第三に、親密な関係性におけるジェンダー暴力にかんして、加害者が経験する生活世界、その背景にある社会構造の問題、臨床の中で進んでいく脱暴力のプロセスをまとめた書籍を発表する。現在晶文社と具体的な出版企画が進んでおり、一般読者を想定したものを出版する。その中で臨床アプローチの理論化も提示する。
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