研究課題/領域番号 |
22KJ0470
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補助金の研究課題番号 |
22J10976 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分47010:薬系化学および創薬科学関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
伊藤 翼 千葉大学, 医学薬学府, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 金属カルベン / DFT計算 / 脱芳香族化反応 / ジアゾフリー / 不斉反応 |
研究開始時の研究の概要 |
金属カルベン種は多彩な反応性を示す高活性化学種であり、その反応性はカルベン炭素が配位する金属元素種に大きく依存し、異なる化学選択性を示す。しかしその金属特性は解明されておらず、その詳細な選択性発現メカニズムは未だ不明である。また銀を触媒として用いた場合、汎用される他の金属触媒とは異なる反応性を示すことが知られているものの、その反応開発研究は限定的である。そこで申請者は銀カルベン種の反応開発を通じて、その化学的性質や電子構造等を解明することで、未踏金属カルベン化学の開拓に挑戦する。
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研究実績の概要 |
金属カルベン種は多彩な反応性を示す高活性化学種であり、その反応性はカルベン炭素が配位する金属元素種に大きく依存し、異なる化学選択性を示す。しかしその金属特性は解明されておらず、その詳細な選択性発現メカニズムは未だ不明である。 一方で、検討の中でαージアゾアミド基を有するフェノール誘導体に有機ホウ素触媒を作用させることで、脱芳香族的スピロ環化反応を進行させることを見出した。そこで、カルベン種の発生機構および反応機構解析技術の獲得および向上を目的に、有機ホウ素触媒を用いた脱芳香族的スピロ環化反応の機構解析を開始した。まず密度汎関数理論に基づく計算化学を用いた機構解析に取り組んだところ、従来法と異なるホウ素カルベン種の発生機構を経ている可能性が示唆された。そこで、Distortion-Interaction modelやNatural Energy Decomposition Analysis、Non-covalent Inteaction PlotそしてNBO Analysisを活用することで、ホウ素カルベン発生段階の安定化メカニズムの解析と新規カルベン種の安定化機構を解明した。 続いて、ジアゾフリーな銀カルベン発生法の開発に取り組んだ。 金属カルベンを用いた反応開発は国内外で数多く報告されているが、銀カルベン種を使用した例は極めて限定的であり、申請者が開発したジアゾフリー銀カルベン発生法を活用することで、銀カルベン種の合成化学的有用性の大幅な向上が望めると考えた。ナフタレン環を有するイナミド基質に酸化剤および銀触媒を作用させることで、分子内脱芳香族的シクロプロパン化反応が進行したと考えられるシクロプロパン化体が得られた。さらに不斉反応へと展開し、現在はモデル基質において目的の反応成績体が収率86%, 93%eeで得られるまで、反応条件を改善した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金属カルベン反応の化学選択性の発現機構およびその要因に迫ることができる機構解析技術を獲得しているから。 また、キラル銀触媒を用いた、ナフタレン系ベンゼノイドのジアゾフリーな不斉脱芳香族的シクロプロパン化反応の条件最適化を行い、モデル基質では収率86%、93% eeで目的のシクロプロパン化体が得られている。以上から、研究目的である「銀カルベン種の合成化学的有用性の大幅な向上」に大きく寄与しうると判断できる研究結果が得られているから。
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今後の研究の推進方策 |
銀触媒によるナフタレン系ベンゼノイドの脱芳香族的シクロプロパン化反応の検討を進める。具体的にはまず、本反応の基質適応性を調査する。モデル基質からは五置換シクロプロパンが得られるが、ナフタレン環に官能基を導入することで全置換シクロプロパン骨格をジアステレオ、エナンチオ選択的に構築できることが予想される。全置換シクロプロパン骨格のエナンチオ選択的な合成法は限定されているため、合成化学の観点からも本研究の重要性が増すことが予測される。 また、本反応により、平面的なナフタレン系ベンゼノイドが4連続縮環骨格を有する立体的なノルカラジエン化合物へとジアステレオ選択的に変換されるため、複雑に縮環した特異的な骨格を活用する変換法を検討する。ボランカルベン反応の解析で得た機構解析技術を用いてキラル銀カルベン反応の化学選択性の発現メカニズムやエナンチオ選択性発現機構を明らかにする。
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