研究課題/領域番号 |
22KJ0472
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補助金の研究課題番号 |
22J11250 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分43040:生物物理学関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
渡邉 一樹 千葉大学, 医学薬学府, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
2023年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2022年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | 分子動力学計算 / 拡張アンサンブル法 / フラグメント分子軌道法 / タンパク質間相互作用 / 分子シミュレーション |
研究開始時の研究の概要 |
SARS-CoV-2は全世界に蔓延し、肺炎等の重篤な疾病を引き起こすウイルスであり、ウイルス先端のRBDと呼ばれる箇所の変異により、感染力を維持・増強させている。 本研究では変異株SARS-CoV-2に対して有効な活性を示す抗体を設計することを目的に、生体分子関連の計算科学的手法として広く用いられている分子動力学法とフラグメント分子軌道法を組み合わせることで、RBD-抗体間の精密な相互作用解析を行う。その結果をもとに、SARS-CoV-2変異株ウイルスに対して高い阻害活性を示す抗体分子の考案を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、SARS-CoV-2のウイルス先端に位置する受容体結合部位 (RBD) と、ウイルス感染を抑制する中和抗体との間のタンパク質間相互作用をより精密に解析する計算科学的手法を確立し、強力な活性を示す新規の中和抗体の提案を目指すものであった。提案手法のテスト計算を繰り返し行うために、系のサイズが小さく、計算コストの大幅な削減が期待されるHDM2-p53部分ペプチド複合体を用いて新規手法の最適条件の検討を行った。 検討対象の広域な構造サンプリングを実現するために、拡張アンサンブル法の一つであるgREST (generalized replica-exchange with solute tempering) を適用したHDM2 apo体の分子動力学計算を実施した。HDM2はN末端のlidがdisorderしたopen状態と、lidがcore領域内のp53結合サイトと結合したclosed状態の2状態間の構造平衡状態にあることが知られていたが、この計算では様々なopen状態に加えて区別可能な二つのclosed状態の安定構造が得られた。また、HDM2 apo体の2次元NMRスペクトル測定から、open-closedの構造平衡に加えて、二つのclosed状態、closed 1とclosed 2の間での構造平衡が存在することが示された。さらに、このNMRスペクトルの化学シフト変化とMD計算から得られた二つのclosed状態内の重要残基の位置関係はよく対応していた。以上の結果から、HDM2 apo体はmulti-stateな構造平衡状態にあることが明らかになった。さらに、追加の検討からHDM2のlidに含まれるS17のリン酸化によって、closed 2構造と比較して閉じた構造を取るclosed 1構造方向へ構造平衡がシフトし、HDM2へのp53の結合が抑制されることが明らかになった。
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