研究課題/領域番号 |
22KJ0488
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補助金の研究課題番号 |
22J21915 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分35030:有機機能材料関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
小澤 竜輝 千葉大学, 融合理工学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 電気化学発光 / DNA / Ru(II)錯体 / アントラセン / 三重項-三重項消滅アップコンバージョン / 混合電解質 / 白色発光 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、DNAを用いた超高速応答電気化学発光(ECL)と電気化学誘起アップコンバージョン(TTA-UC)の組み合わせに着目し、DNA/Ru(II)錯体/アントラセン3元系複合膜電極を作製する。それにより超高速応答青色ECLにおける電気化学誘起TTA-UCの高効率化を目指す。さらにこの知見をもとに、他の発光材料導入による超高速応答ECLの多色発現、DNAのキラルバックボーンとしての構造に起因した電気化学反応をトリガーとした円偏光発光の発現について検討し、これまでに無い高機能ECL素子の実現を目指す。
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研究実績の概要 |
電気化学発光(ECL)は、発光性化合物の電気化学的な励起状態形成に基づく発光現象である。これまでの研究で、超高速応答ECLを示すDNA/Ru(II)錯体複合膜電極間に青色ECL材料の9,10-ジフェニルアントラセン(DPA)を含む電解液を挟み込んだ2極型素子を構築した。その結果、この素子中において、DNA複合膜中のRu(II)錯体と電解液中のDPA間での電気化学反応をトリガーとしたアップコンバージョンに起因した、低電圧駆動での青色ECL発現および青色ECLの高速応答化が初めて達成された。 令和5年度においては昨年度に引き続き、光物理的および電気化学的な観点からDNA/Ru(II)錯体複合膜上におけるDPAのアップコンバージョンについての詳細な挙動を解析した。またアップコンバージョン高効率化に向けたアプローチとして、DNA/Ru(II)錯体複合膜を用いた超高速応答ECL素子の電解液にRu(II)錯体を導入することで、複合膜上に形成される発光箇所である凝集部のRu(II)錯体のECL効率向上を目指した。その結果、凝集部のRu(II)錯体の電解液への溶解抑制に起因してECL寿命が大幅に向上するとともに、凝集部における反応電荷量の増加によりECL強度も大幅に向上することが明らかとなった。この成果は査読付きの画像学会誌に掲載済みであり、今後、超高速応答を示すアップコンバージョンECLの高効率化に繋がることが期待される。 さらに多色ECLへの展開に向けて、青色発光を示すDPAおよび黄色発光を示すルブレンを含む電解質を用いた白色ECL機構について、分子間の電子移動の観点から解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超高速応答電気化学発光(ECL)を示すDNA/Ru(II)錯体複合膜の特性、およびその複合膜を用いた電気化学誘起アップコンバージョン挙動について、昨年度に引き続き共同研究を交えながら詳細な解析が進んだ。光物理特性に加えて電気化学特性も絡めながら考察することで、より詳細な議論が可能となった。 また、超高速応答を示すアップコンバージョンECLの高効率化に向けて、DNA/Ru(II)錯体複合膜を用いた超高速応答ECL素子の電解液にRu(II)錯体を導入することで、大幅に特性が向上した。今までDNA/Ru(II)錯体複合膜系ECL素子の課題であった発光強度の低さ・素子寿命の短さが大幅に改善され、期待以上の結果が得られたと言える。この要因については未だ解明できていない部分も多いため、引き続き解析を進めていく必要がある。 DPAおよびルブレンを含む電解質を用いた白色ECLについて、機構の理解は進んでいるが、素子寿命などの特性に関しては現状課題となっている。
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今後の研究の推進方策 |
DNA/Ru(II)錯体複合膜を用いた超高速応答ECL素子の電解液にRu(II)錯体を導入することで、大幅な特性の向上を達成しており、今後この系と電解液にDPAを導入したアップコンバージョン系を混合させることで、超高速応答を示すアップコンバージョンECLの高効率化を目指す。 さらに超高速応答を示すアップコンバージョンECLの高効率化を目指す上で、DNAとの相互作用を可能とする新規青色発光材料の導入を検討する。それらの新規発光材料を従来と同様の方法で電気泳動を用いてDNAへ取り込み、3元系複合膜電極の作製、さらにはECL素子の作製を進める、それらの光学・電気化学特性やECL特性の検討を行う。これに加え、ECL駆動時の印加電圧条件の最適化や、界面活性剤の導入なども、電気化学誘起アップコンバージョンの高効率化を目指す上で検討する。 DPAおよびルブレンを含む電解質を用いた白色ECLについて、素子寿命などの特性に関しては以前課題があるため、今後は電解液組成や電圧印加条件などの検討により素子寿命等の特性向上を目指す。 また、電気化学反応をトリガーとした円偏光発光(CPL)の発現について検討し、これまでに無い高機能ECL素子の実現を目指すため、高いCPL特性を持つ希土類錯体のECLへの展開、磁気によって容易に発現するCPLのECLへの応用を試みる。
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