研究課題/領域番号 |
22KJ0495
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補助金の研究課題番号 |
20J21514 (2020-2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2020-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分01030:宗教学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
白尾 安紗美 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2023年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2022年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2021年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2020年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | 宗教教育 / アルザス=モゼル / ライシテ / 宗教知識教育 / 政教分離 / 公教育 / 信仰と知 / 市民教育 / 宗教事象 / アルザス=モゼル / 宗教事象教育 / 共生 / 政教分離法 / 地方法 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、フランス北東部のアルザス=モゼル地域における公立学校の宗教教育のあり方を検討する。近年この地域では、現代社会の宗教風景の変化とともに、従来の宗派的宗教教育から、より多くの生徒に開かれた「宗教文化教育」の導入が試験的に行われているが、その基底にある問題意識はフランス教育省が推進する「宗教事象教育」の実施にも通ずるところがある。よって本研究はアルザス=モゼルという地域から、共和国と宗教の関係性を展望する試みを射程に含め、二つの宗教的知識の教育のあり方を、ライシテをめぐる議論と関連づけながら比較検討し、現代フランスの公教育における宗教の位置づけの再考を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の最終年度にあたる本年度は、第二次世界大戦後のアルザス=モゼルにおいてライシテが受容されてきた過程を、宗教教育の変革との関係のなかで紐解くため、二度の現地調査で得られた資料分析やインタビューの内容に基づき、宗教教育の変革に関係する重要な出来事や、手がかりとなる用語を精査する研究を行った。 本年度はフランス、アルザス地方とモゼル県で二度の調査を行った(2023年5月、2024年2月)。これらの調査で入手した資料や、宗教教育関係者を対象に実施したインタビュー内容などを通して特に注目したのは、アルザス=モゼルの公立小学校の特徴を表す「宗派混成学校」という語である。「宗派混成学校」は19世紀のフランスですでに存在していた異宗派の子どもが通う学校形態だが、とりわけアルザス=モゼルでは、戦間期から今日にかけて、学校の脱宗教化やライシテの原則との関係の中で用いられてきたことが明らかになり、この成果は学術論文や学会、各種研究会の場で発表した。 本研究は、理念的には相容れない共和国のライシテと宗教教育が、アルザス=モゼルでなぜ維持され、いかなる過程を経て共存してきたのかを検討してきた。この地域の宗教教育の変化はローカルな次元で起きているものに映るが、20世紀後半の西洋社会で見られた世俗化現象やフランス国内のライシテ解釈の変容、公教育における宗教的知をめぐる議論などの影響を多分に受けている。特に、政教分離法が適用されていないアルザス=モゼルで(共和国の価値観としての)ライシテの受容を推し進めた一つの要因には、2000年代以降フランスの公教育で導入される「宗教事象教育」があった。第二次大戦後のアルザス=モゼルは共和国に統合されながら、宗教と教育に関しては完全に同化されずに差異が保たれてきたが、本研究はこのような普遍性と特殊性が生み出す緊張関係を描き出す事例研究となった。
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