研究課題/領域番号 |
22KJ0508
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補助金の研究課題番号 |
21J00079 (2021-2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2021-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
雜賀 広海 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 香港映画 / カンフー映画 / 老い / 身体性 / 男性性 / 民主化運動 / 映像メディア |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は中国化が進む香港において注目が集まる香港独自の歴史や文化を問うものである。いわゆる香港人アイデンティティの問題は、1997年の香港返還を目前したとき以来、香港映画ではくり返し描かれてきた。2010年代以降、この主題に新たにつけ加わっているのが老いである。戦後生まれの香港人第一世代が老境にさしかかっている現在、香港映画はアイデンティティだけではなく香港人としての生を思考する段階に入っている。本研究は香港映画がいかなる香港人の生のモデルを描出しているかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
学会発表「カンフー映画史にたいする二つの解釈」と論文「カンフー映画とその歴史にたいする二つの解釈」では、『じじぃドラゴン』と『カンフー・ジャングル』という二つの作品を題材に、2010年代以降の香港映画におけるカンフーの描写を比較した。前者は香港ローカル文化としてカンフーを描き、中国との合作である後者はより一般的な中国武術としてカンフーを位置づけている。ただし、前者だけが香港映画であり、後者は中国化して香港文化が消去されているとする二項対立的な解釈ではなく、後者にもまた中国文化を雑種化する香港文化の機能が作用している、つまり香港の刻印が残存していることを論じた。 学会発表「ドニー・イェンが演じる老い」では、ドニー・イェンの『イップ・マン』シリーズについて論じた。このシリーズは、中国化した香港映画を象徴する俳優や作品の一つと見なされている。しかし、本作を読み解いてみると、やはり中国文化への統一というよりも、中国と香港のような矛盾しあう二つの要素が混在する雑種的な英雄として、ドニー・イェン演じるイップ・マンが形成されていることがわかる。 論文「カンフーマスターの老い」は、かつては香港を代表する映画スターであり、今ではほとんど香港文化から切り離された中国人スターと見なされているジャッキー・チェンをとりあげ、香港から中国への移行と同時に、CGIを拒否する実体的アクションからCGIを受けいれる虚構的アクションの導入へという変化も起きていることに注目した。その変化は実体的アクションと矛盾する身体的老いをジャッキー自身が認めてスター・イメージを自覚的に変容させていく過程でもある。 研究期間全体を通じて、近年の香港映画は中国化によって消失していく香港文化があるだけではなく、俳優の身体性に香港映画の記憶を読み込んで解釈し、中国化したとみなされる映画も再び香港化させうる視点があることを提示した。
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