研究課題
特別研究員奨励費
分子雲衝突は、分子ガスを高密度に圧縮し大質量形成を促進させると考えられており、銀河の星形成における重要なプロセスであると近年注目されている。しかし、星形成が誘発されるために必要な条件(衝突速度など)はまだ不明な点も多い。また、天の川銀河以外の銀河を対象とした研究例は少なく、調査済みの環境が限られている点も問題点である。そこで本研究では、様々な形態の円盤銀河だけではなく、衝突銀河などの特異な銀河も対象に、様々な環境に対し、分子雲衝突を包括的に調べ、星形成が誘発されるための物理条件を求める。
本研究の目的は、近傍銀河を対象に、分子雲衝突によって星形成が誘発(抑制)されるための物理条件を解明することである。本年度は近傍銀河の分子雲衝突に関連して以下の2つの研究を行った。1. 近傍棒渦巻銀河NGC3627を対象とした研究:円盤銀河の星形成効率は、銀河内部の構造に依存し、特にBarでは低く、Bar-end(BarとArmの結合部)では高い。近年では、内部構造が分子雲衝突の性質に影響を与えている説が唱えられている。さらに、分子雲衝突による星形成シナリオでは、星形成は分子雲の衝突速度が大きいほど、また分子雲の面密度が小さいほど星形成が誘起されにくい。そこで、近傍棒渦巻銀河NGC3627を対象に、分子雲の衝突速度、面密度、星形成効率の関係が銀河の内部構造にどのように依存しているか調査した。結果として、分子雲衝突による星形成効率は衝突速度が大きいほどまた分子雲の面密度が小さいほど小さくなる傾向が明らかになった。さらに、BarとBar-endを比べるとBarのほうが衝突速度が大きく面密度が低いため、星形成効率が低いことがわかった。2. 衝突銀河アンテナ銀河を対象とした研究:分子雲衝突の性質を円盤銀河だけではない様々な環境においても調べるため、京都大学との共同研究として、1. の研究と同じ手法を、近傍の衝突銀河アンテナ銀河に適用した。円盤銀河と違い、衝突銀河は銀河同士が100 km/sを超える速度で衝突しており、円盤銀河では知ることのできない非常に激しい分子雲衝突の性質を調べることができる。調査した結果、衝突速度は100 km/s前後と非常に大きいが、1.と同様に、分子雲衝突による星形成効率は衝突速度が大きいほどまた分子雲の面密度が小さいほど小さくなる傾向が見られた。以上から、分子雲衝突による星形成の性質が環境が異なれど、定性的に同じであることが示唆された。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (23件) (うち国際学会 8件) 備考 (1件)
The Astrophysical Journal
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https://www.nro.nao.ac.jp/news/2023/0630-maeda.html