研究課題/領域番号 |
22KJ0512
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補助金の研究課題番号 |
21J00227 (2021-2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2021-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分05010:基礎法学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
秋元 真吾 東京大学, 法学政治学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | フランソワ・コナン / 統治階層 / 人文主義法学 / 裸の合意nudum pactum / 契約contractus / sunallagma / 自然法 / 万民法 / アンドレア・アルチャート / フランソワ・ル・ドュアラン / 体系化 / 契約論 / アンドレ・アルチャート |
研究開始時の研究の概要 |
16世紀フランスで花開いた人文主義法学の下で「契約」は華々しい論争の的となった。しかし、中世法学の延長にありながら古典古代(とりわけギリシア史料)への参照を行うという議論の難解さから人文主義法学における契約論はこれまで本格的な研究の対象にはならなかった。本研究は、訴願審査官フランソワ・コナンに至る無名要物契約論の展開に着目することで、古典への回帰が当時の契約論にいかなる刷新を齎したかを探る。とりわけ、フランス王国の高位行政官コナンのテクストの分析を通じ、彼が宮廷の革新的な法服と連帯しながら、「新大陸」発見以降の経済のグローバル化にいかに応じようとしたのかを明らかにすることを目指す。
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研究実績の概要 |
2023年度はアルチャートの契約論を扱う準備作業をした後、主として訴願審査官フランソワ・コナンに係わるこれまでの研究を彼の契約論との関係に落とし込む作業を行った。まずは、(1)先行研究に依拠しつつ、16世紀のフランスの実務上、裸の合意nuda pactio、即ち口頭での単なる約束に法的効力を認める傾向が広く実務に生じていたことを確認した。続いて、(2)昨年度までの研究の延長上、宮廷における人文主義的教養を持つ統治階層のサークルがこの傾向に強く反発したことを明らかにした。この後、(3)コナンの契約論の本体を明らかにする作業に取り組んだ。これによって、彼の契約論は「諾成契約」の無批判な横溢に対するオルタナティヴとして提示されたこと、また、それが前年度までに明らかにした法全体に対する「体系化」の作業の基礎の上に成り立っていることを明らかにした。事実、コナンの理論的関心は自然法上認められるとされる裸の合意を裁判管轄から除外し、裁判官が考慮すべき事態を限定することに向けられる。彼によれば、契約contractusは(問答契約を除き)万民法の枠内でのみ観念し得、その成立の如何は対価的な交換関係の中にsunallagmaを見い出し得るか否かに依存する。かくして、コナンはローマ元首政期の法学者ラベオーの契約論の断片に特に着目し、(正しくも)その起源をアリストテレス哲学に遡ることで、無名契約を創出する道を切り開く。しかし、コナンにおける主眼はむしろ契約の成立要件を明確化・単純化した形で現職の司法官に流布し、上記の混乱した傾向を掣肘しようとしたことにあったと言える。これが体系化が強く志向される所以である。以上の成果は、2025年刊行予定の仏語の研究書(『人文主義法学』)の「法の体系化」の項目の一部において、またより敷衍された形では海外の査読論文において発表される予定である。
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