研究課題/領域番号 |
22KJ0513
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補助金の研究課題番号 |
21J00259 (2021-2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2021-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分01040:思想史関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
井上 卓也 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 無意識 / 精神分析 / 臨床科学 / フランス思想 |
研究開始時の研究の概要 |
19世紀末に登場した精神分析は、以降神経症の治療実践という本来の領域を超え、他の人間科学や哲学における認識モデルの更新に重要な貢献をなしてきた。とりわけ戦後のフランス哲学では、精神分析は参照項として特権的な地位を占めることになる。しかし、個別の思想家の事情に還元できないこのような思想史の全体的傾向については、その理由や歴史的条件が十分明らかにされてきたとはいいがたい。本研究は、20世紀フランス哲学・思想の各局面における「無意識」概念の受容を例にとり、それぞれの文脈におけるこの概念の機能を検討することで、精神分析が新しい思想的言説を生み出すうえで果たした役割について解明することを試みる。
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研究実績の概要 |
最終年度の研究実績は、以下の通りである。 1)これまでの研究をまとめる作業に取り組んだ。二年目までの研究の重要な成果として、初期ラカンにおけるメイエルソンの科学哲学への参照に関する論文を学会誌に発表した。 2)二年目の成果からの展開として、戦後フランスの科学思想史が「臨床の学」としての精神分析をいかに理解したかについて調査を進めた。まず、60年代前半のフーコーの著作における(セリュ―ら)前時代の精神医療史に対する批判、という文脈を整理した。そのうえで、「狂気の経験」の長期的な構造変化に精神分析の登場を位置づける『狂気の歴史』を中心に、精神分析が「非理性との対話可能性」を回復させたとするその主張を再検討した。また、個の合理化、症例の学という視点から同時代のフーコーの「臨床」概念を再考した。この点では、フランス・パリにおける資料調査を通じて、精神分析を絡めながら臨床科学の認識論を展開していたジル・ガストン・グランジェの重要性を確認することができた。こうした作業により、60年代における無意識と言語の関係の捉え直し、という本研究が扱う事象に、これまでにない観点から光を当てることができた。 3)精神分析における分析家の権威、およびそれについて分析家が持つ反省的な認識について、歴史的かつ集合的な観点から考察を行った。この点に関連して、精神分析家シャンドール・フェレンツィ生誕150周年シンポジウムに登壇し、1910年代において精神分析の実践がいかなる変化を遂げたかを、フロイトとフェレンツィの技法を中心として検討する発表を行った。これは直接的にフランス思想を扱ったものではないが、分析家が患者に対して有する権威をめぐる両者の反省を比較し、その相違が技法に反映されているという内容は、再帰的な知としての精神分析、という本研究の見通しと強い関連性を持つものである。
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