研究課題
特別研究員奨励費
本研究が目指すところは、和と積からなる回路という枠組みを取り払うことで、大規模なデータ分析等を暗号化していない状態で行うときと遜色ない速度で秘密計算により実行できるようにすることである。具体的には、乗算に代わる新たな基本構成単位を、通信量複雑度の理論などを援用し再構成することを目指す。また、構成だけにとどまらず、得られたプロトコルを組み合わせて、プライバシー保護データ分析の実装実験を行うことも目指す。
最終年度は前年度に引き続き、correlated randomness (CR) という乱数を事前計算で生成することを許す、CRモデルと呼ばれる2者間秘密計算における乱数長や通信量に関する理論研究を行った。また、別の秘密計算モデルである、private simultaneous messages (PSM)における通信量に関する理論研究も行い、下記の成果を得た:1.CRモデルの2者間秘密計算において、通信量や通信回数が最適となるonline-optimalという性質を満たす場合に必要な乱数長が入力のビット長に対して指数サイズになることがある、という前年度得られた結果を拡張し、通信量のみが最適となるcommunication-optimalという性質を満たす場合でも同様に、必要な乱数長が指数サイズになることがあることを示した。2.既存のPSM方式の多くが満たしている性質を定式化し、その性質を満たすようなPSM方式が置換群と対応することを示した。これにより、その性質を満たすPSM方式の数え上げを置換群の数え上げに置き換えることができ、PSM方式の通信量の下界証明に援用できる可能性があることを見出した。研究期間全体を通して、主にCRモデルでの2者間秘密計算における乱数長に関する理論的成果を複数挙げることができた:1.通信量が最適となる条件の下での乱数長の下限の導出。2.CRモデルで利用される関数秘密分散と呼ばれる暗号技術の鍵長の下限とそれをほとんど達成する方式の構成。3.関数の制限を計算する秘密計算プロトコルにおける乱数長の削減手法の提案。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
IEICE Transactions on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences
巻: E107.A 号: 3 ページ: 283-290
10.1587/transfun.2023CIP0023
巻: E105.A 号: 3 ページ: 404-416
10.1587/transfun.2021TAP0004
130008165461