研究課題
特別研究員奨励費
本研究は、相変化材料を用いた光位相シフタや光強度変調器を集積したプログラマブル光回路の実証を目指す。相変化材料を用いた変調器は不揮発的に動作が可能であるため静的な消費電力がゼロになる。これにより、非常に低消費エネルギーかつ低遅延の行列演算が可能になると期待できる。また、人工知能を用いた設計を光学素子に適用することで低損失かつ小型の光学素子を設計し、相変化材料を用いたデバイスと組み合わせることで非常に面積効率の高い光回路の実現を目指す。
本研究では相変化材料を用いた光変調器を用いたプログラマブル光回路の実現を目指した。最終年度において、相変化材料を用いた光変調器については、中赤外領域で低損失な光位相変調器を実現するために開発したGSTSを、近赤外領域で動作する光強度変調器に用いることを提案し、低い挿入損失と高い消光比を両立する光強度変調器の実証に成功した。またこのGSTS強度変調器に基づく新しいアーキテクチャを持つ光行列演算回路を考案し、光を用いた4x4の行列演算の実証に成功した。また、中赤外ではなく近赤外領域で低損失な光位相変調器の実現のために、ワイドギャップ材料である硫化アンチモン(Sb2S3)の低損失化にも取り組み、成膜条件の最適化によって光吸収の低減が可能であることを実験的に明らかにした。さらに、光回路の重要な構成要素であるS字曲げ導波路と2x2カプラに対して、我々が提案したCMA-ESという最適化手法に基づく設計を適用することで、従来素子に比べて挿入損失が低い素子を実験的に実証することに成功した。最終的に、これら構成要素レベルの実証結果を踏まえて、超小型の光回路のサイズ・損失・演算効率などの見積もりを行い、従来の光回路に比べて挿入損を増大させることなく面積を30分の1程度に小型化できる見通しが得られた。総括として、相変化材料を用いた不揮発かつ小型の光位相シフタと人工知能設計によって小型化・低損失化された受動素子それぞれの実験的実証には成功し、これらの組み合わせによるプログラマブル光回路の小型化というコンセプトの有効性を明らかにできた。また、研究計画にはなかった成果として、新規開発したGSTSを用いた低挿入損失の強度変調器およびそれらを用いた光行列演算回路の実証に成功し、大規模化可能な新しいアプローチを実験的に示すことができた。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 8件、 招待講演 3件)
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