研究課題/領域番号 |
22KJ0552
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補助金の研究課題番号 |
21J20336 (2021-2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2021-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分02070:日本語学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小池 俊希 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
2023年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2022年度: 400千円 (直接経費: 400千円)
2021年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
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キーワード | 助詞モ / 係助詞 / とりたて詞 / 上代語 / 日本語史 / 文法史 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、上代(=飛鳥・奈良時代)日本語の助詞モに特徴的な非合説の機能に着目して、通時的な観点からその衰退に説明を与えることを目指すものである。上代日本語の助詞モは、近・現代日本語の助詞モに中心的な合説の機能から従来解釈されてきたものの、合説の機能からは説明できない用法が少なからず認められるため、その解釈には限界があると考えられる。そこで本研究では、上代における助詞モの機能について、合説の機能に囚われることなくその体系を把握し、その体系に従いつつ助詞モの機能が非合説から合説に傾いてゆく歴史的変化を明らかにする。
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研究実績の概要 |
近・現代語における「モ」はまさしく合説の助詞である。そのような理解から古代語の助詞モもまた理解されてきたが、とくに上代(=飛鳥・奈良時代)における助詞モには合説性からは説明しがたい用法が少なからず確認される。このような問題意識から、本研究では、[A]上代における助詞モの機能の究明、および、[B]助詞モの機能の変遷の解明を2つの軸として企図している。 〔2022年度の研究実績〕 2022年度は、上記2つの軸の両者を検討した。具体的には、[A]の側面からは、(1)希望表現と共起する助詞モに関する検討、および、(2)「ダニ」に下接する助詞モに関する検討に取り組み、[B]の側面からは、(3)上代・中古における複合係助詞の変遷に関する検討、および、(4)中世末期抄物資料の翻刻に取り組んだ。 (1)については、上代における希望表現と助詞モの共起関係に着目して、助詞モは実現可能性の低い事態を提示する希望表現と顕著に共起し、その機能が非合説由来であることを明らかにした。この研究成果は、『萬葉』235号においてすでに公開されている。(2)については、「ダニモ」という表現を分析して、副助詞と否定のスコープをふまえることで、〈最小限度+詠嘆〉から〈最小限度〉への転換が生じたことを指摘した。この研究成果は、『日本語学論集』19号においてすでに公開されている。(3)については、上代・中古における係助詞の相互承接について分析した結果、係助詞に3種が認められる可能性を指摘した。この研究成果は、令和4年度東京大学国語研究室会にてすでに発表済みである。(4)については、昨年度までに引き続き、中世日本語の口語資料として、質的量的にきわめて重要な価値を有する『玉塵抄』の翻刻をおこなった。この研究成果は、『日本語学論集』19号においてすでに公開されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、〔研究実績の概要〕に記載したように、(1)希望表現と共起する助詞モに関する検討、(2)「ダニ」に下接する助詞モに関する検討をおこない(=本研究の2つの軸のうち、[A]上代における助詞モの機能の究明、に当たる)、また、(3)上代・中古における複合係助詞の変遷に関する検討、および、(4)中世末期抄物資料の翻刻をおこなった(=本研究の2つの軸のうち、[B]助詞モの機能の変遷の解明、に当たる)。 それぞれの研究について、口頭発表や論文投稿という形で成果の公表にまで至ることができたため、本研究の現在までの進捗状況は、「おおむね順調に進展している」と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、最終年度の総まとめの期間として、本年度までの成果をふまえつつ、[1]「……モ……ニ」型の構文における助詞モの機能、[2]助詞モを構成要素とする複合係助詞の史的展開、[3]訓点資料における助詞モの機能の変遷、[4]中世末期抄物資料の調査、の4点について重点的に分析を加える。 [1]については、「枝もたわわに」のような「……モ……ニ」型の構文を対象として、助詞モの機能を検討する。なお、分析対象は上代日本語とするが、これは現在分析しうる日本語のなかで、上代語がもっとも生産的に「……モ……ニ」型の構文を用いるためである。 [2]については、上代から中古にかけて、「モ」を構成要素とする複合係助詞を検討する。本年度までの研究成果により、従来係助詞と一括りにされてきた品詞のなかに、少なくとも3種の別が認められる可能性があることが明らかになったため、この3種それぞれの機能を明らかにしたうえで、改めて係助詞という品詞を整理する。 [3]については、従来十分に検討がなされてこなかった訓点資料を対象として、助詞モの史的変遷の空白部分を明らかにする。索引や訳文が整備された資料に関しては本年度までに調査したため、索引や訳文が公開されていない資料にまで対象を広げて調査し、訓点資料における助詞モの用法を整理する。 [4]については、2022年度までに引き続き、東京大学国語研究室蔵『玉塵抄』第五巻後半の翻刻をおこなう。
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