研究課題/領域番号 |
22KJ0569
|
補助金の研究課題番号 |
21J20631 (2021-2022)
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2021-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分32010:基礎物理化学関連
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 駿 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2023年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2022年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2021年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
|
キーワード | 気相光電子分光 / 金クラスター / チオラート配位子 / DFT計算 / 超原子 / 光電子分光 / 配位子効果 |
研究開始時の研究の概要 |
数個から数十個の金属原子の会合体が有機配位子で保護された配位子保護金属クラスターは、化学的に極めて不活性である一方、一部の表面配位子を加熱焼成により除去して金属クラスター表面を露出させることで反応活性を付与できる。本研究では、衝突誘起解離による配位子の脱離を加熱焼成のモデルプロセスとみなし、露出面が制御・規定された配位子保護金属クラスターを分子精度で創製し、機能の解明と開拓を目指す。本手法では組成を質量分析により確認できる点が利点である。衝突誘起解離の生成物を評価するための装置開発、露出面の環境を制御するためのクラスター設計、部分露出した金属クラスターの反応性の解明に取り組む。
|
研究実績の概要 |
本年度は、完全に被覆された金属クラスターと部分露出した配位子保護金属クラスターの両方について昨年度に測定効率を劇的に改良した気相光電子分光装置を用いて電子構造評価を行った。 完全に被覆された金属クラスター[Au25(SR)18]-の光電子スペクトルについてレーザー強度依存性の測定やナノ秒ポンプ-プローブ光電子分光を行い、光励起状態を経由した二光子光電子脱離が進行することを明らかにした。そこで、二光子過程を抑制しながら超原子コアを持つ種々の配位子保護金クラスターの光電子スペクトルを測定し、電子親和力の再決定を行った。また、超原子分子として期待される双正二十面体MAu22コアを有する[MAu37(SR)24]- (M = Pd, Pt)について光電子スペクトルを測定し、超原子価結合軌道に帰属できるピークを観測した。この結果は理論的に予測された超原子価結合の存在を支持する結果である。 衝突誘起解離により部分露出した配位子保護金属クラスターの電子構造を上述の気相光電子分光により評価した。[PdAu24(C≡CR)18]2-から生成する[PdAu24(C≡CR)18-2n]2- (n = 1-6)は、配位子の脱離の進行に伴って電子束縛エネルギーが減少した。この傾向は、以前報告した部分露出した推定構造の電子脱離エネルギーの傾向と一致し、衝突誘起解離により部分露出が進行したことを示唆している。また、部分露出した配位子保護金属クラスターの反応性を調べるため、四重極線形イオントラップにマイクロニードルバルブを通してガスを導入する装置を実装した。この装置を用いて上述の[PdAu24(C≡CR)18-2n]2-と酸素ガスの反応の予備実験を行ったところ、露出の進行とともに酸素付加体の生成量が増えることを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に測定効率を大幅に改善した気相光電子分光装置を用いることで、配位子保護金属クラスターの光励起状態を経由した二光子光電子脱離過程を見出し、配位子保護超原子の電子親和力の再決定や配位子保護超原子分子における超原子価結合軌道の実験的観測を行った。これらの成果は部分露出した金属クラスターの電子構造を評価するための基盤となる知見である。さらに本手法が部分露出した金属クラスターへの適用が可能であることを確認し、露出したクラスター表面と気体分子の反応性を評価するためのセットアップを実装した。以上のことを踏まえて順調に進展していると結論した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は種々の部分露出した配位子保護金属クラスターの光電子分光を行い、量子化学計算と併せて部分露出したクラスターの幾何的および電子的特徴を明らかにする。具体的にはAu25(SR)18-から生成するAu21(SR)14-やAu17(SR)10-を対象にする。 また、実装した気体分子とクラスターを反応させるためのセットアップを用いて、部分露出した金属クラスターの反応性を評価する。具体的には二酸化炭素やアルコールのような気体分子とイオントラップへ導入し、付加体や反応生成物を質量分析により確認し、可能であれば光電子分光を行い電子構造を評価する。
|