研究課題/領域番号 |
22KJ0595
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補助金の研究課題番号 |
21J20856 (2021-2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2021-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
北山 圭亮 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2023年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2022年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2021年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
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キーワード | 光誘起相転移 / フロケ理論 / トポロジカル相転移 |
研究開始時の研究の概要 |
近年フロケ理論を用いた光誘起相転移の理論研究が多くなされているが、それらはレーザーを照射し続けた非平衡準定常状態を対象とした研究が主である。しかし試料が加熱するなどの問題を回避するために実験ではパルス型の光を用いた研究が多い。そこで、本研究ではパルス型の光を照射した強相関系の光誘起トポロジカル相転移に関わる物理量のダイナミクスを計算して、相互作用や散逸がダイナミクスに与える影響を考察する。
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研究実績の概要 |
本研究は光照射した強相関系の光誘起相転移を理論的に予言することを目的にしている。そこで以前より扱ってきたα型の分子配列を持つ有機導体を対象にして、楕円偏光を照射したときの振る舞いをフロケ理論を用いて解析した。この物質はバンド構造にディラックコーンが2つ存在する物質である。強度の低い楕円偏光照射時にはディラックコーンにギャップが開いてノンゼロなチャーン数によって特徴づけられるチャーン絶縁体に相転移する。特定の範囲の偏光角度の楕円偏光を照射時には、強度の増大に伴いバンド構造のディラックコーンが近づき、最終的にはディラックコーンの衝突・崩壊に伴いチャーン絶縁体から通常の絶縁体に相転移することを明らかにした。さらに、フロケ理論とケルディッシュグリーン関数を用いた手法を組み合わせた理論を用いてホール伝導度を計算した結果、この新しいタイプの光誘起トポロジカル相転移はホール伝導度を計測することで観測できることを明らかにした。この内容は論文としてまとめて、昨年の9月に国際誌に掲載された。 この研究と並行して直線偏光を照射した有機導体において流れる電流の理論論計を行なった。ここで扱っている現象はホール伝導度と異なり、電場を加えずに光を照射しただけで電流が流れる現象である。電荷秩序がある有機導体においてこの計算を行なって、直線偏光照射下の有機導体で大きな電流が流れることを明らかにした。この内容はより詳細に議論して論文としてまとめる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的は強相関系の光誘起現象を理論的に予言することである。その中で我々は以下の理由から有機導体α-(BED-TTF)2I3を対象として研究を行なった。一つ目はこの物質の格子定数が大きいことである。本研究では光電場の影響はトランスファー積分にパイエルス位相を加えることで考慮しているため大きな格子定数を持つ物質において光電場の効果が大きくなる。2つ目はフェルミ準位近傍の4つのバンドが他のバンドから離れているため、オフレゾナントな状況を実現しやすいという理由である。このことで光照射による熱化が抑えられると推測される。3つ目は適度に複雑な電子構造を持つため、光の電場強度・振動数・偏光角度などによって起こる現象が大きく異なる可能性があることである。こうした理由からこの物質は近年盛んに研究されている光を用いた物性制御の理論研究の発展に資する物質であると推測し、楕円偏光を照射したα-(BED-TTF)2I3においてディラックコーンの衝突・崩壊に伴う新しいタイプのトポロジカル相転移が起こることを明らかにした。さらに直線電流を照射したα-(BED-TTF)2I3において大きな電流が流れることを明らかにして、太陽電池などに応用可能な物質であることを明らかにした。この結果と昨年度以前の結果(円偏光照射したα-(BED-TTF)2I3におけるトポロジカル相転移、直線偏光照射したα-(BED-TTF)2I3の創発的反平行磁束量子ペアの対消滅現象)と合わせて複数の国際会議で口頭発表を行った。このことから本研究課題は当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で楕円偏光を照射したα-(BED-TTF)2I3でディラックコーンの衝突・崩壊に伴う新しいタイプのトポロジカル相転移が起こることと、この相転移現象がホール伝導度で実験で観測できることを明らかにした。しかし、この現象がホール伝導度のダイナミクスという観点でどのように観測されるのかまでは明らかにしていない。そこで、楕円偏光を照射したα-(BED-TTF)2I3におけるホール伝導度のダイナミクスの計算を行う。さらに相互作用や散逸がこの現象に与える影響を考察する。 この研究に並行して異なる軌道間の跳び移りがある系の光誘起現象の理論研究を行う。この研究はフリブール大学のPhilipp Werner教授との共同研究である。Philipp Werner教授らはこれまで動的平均場理論を用いた解析で異なる軌道間のホッピングがある系においてはパイエルス位相で書き表される効果に加えて、ダイポール行列と光の振動電場の内積で書き表される項も必要であることが明らかにした。そこでこの効果が光誘起トポロジカル相転移現象にどのような影響を与えるのかを明らかにする。最初はフロケ理論から得られる有効模型を用いて計算を行い、最終的にはダイナミクスを用いた計算を行う予定である。
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