研究課題
特別研究員奨励費
惑星着陸探査機による揮発性元素の分析に向けてレーザー誘起プラズマ分光(LIBS)及びレーザー同位体分光(LAMIS)法の性能試験及び校正方法の開発を行う。これらの装置は前年度までに製作済みである。近年の月面観測や小惑星の帰還試料分析から、将来これらの天体への着陸探査によって表層あるいは地下に存在する水素の量を制約することが期待されている。本研究では、着陸探査によるLIBS/LAMIS分析から、水素を含む揮発性元素の量を高精度で測定することを目指す。特に、水素については1 wt%H2O以下の精度で定量するために必要な装置の性能(感度や分解能)及び校正方法(試料群・変量)を明らかにする。
前年度の研究(Yumoto et al., 2023)から、レーザープラズマ分光法を用いて真空中で正確に水素量を定量するには、主要元素量(Si,・Fe・Mgなど)も同時に定量し、岩石種を同定することが有効だと分かった。そのため、初年度に製作した装置を用いて、月隕石を含む175個の岩石・レゴリス試料の元素分析を行い、主要元素の定量性能を明らかにした。また、表面の物理状態(粒径やバルク密度)によって発光輝線の強度が数倍変わることもYumoto et al.(2023)で明らかになったため、粒径・密度が異なる試料も網羅的に測定し、実際の惑星表面に存在しうる様々な状態の試料を正確に分析できる汎化性能の高いデータ校正手法を開発した。部分最小二乗回帰を用いた本校正手法を適用することで、高イルメナイト土壌・純斜長岩・(ノーライト質な組成を持つ)衝突溶融岩の同定など、将来の月探査の主要目標に資する分析が可能であることを示し、レーザープラズマ分光法が月探査にも有効であることを明らかにした。これらの成果をSpectrochimica Acta Part B誌に投稿した。本研究期間全体を通じて開発した一連の分析装置とその校正手法は、様々な化学組成・物理状態を持つ惑星表面物質に対して、真空環境下でも精密な前生物的物質の元素分析を可能にするものである。これまでも米国主導の火星探査によってレーザープラズマ分光法は強力な元素分析手法であることが示されてきた。これに対し、本研究で開発した新たな装置・手法によって、プラズマ発光強度が何桁も小さくなる大気がない惑星であっても、火星環境と同等あるいはそれよりも良い精度での元素分析が可能になった。更に、真空中での計測に必要な装置の性能値(分光器の波長分解能や口径の大きさなど)も明らかになったため、探査機搭載品の製作という次のステップに進むことが可能になった。
すべて 2024 2023 2022 その他
すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Planetary and Space Science
巻: 240 ページ: 105835-105835
10.1016/j.pss.2023.105835
Spectrochimica Acta Part B: Atomic Spectroscopy
巻: - ページ: 106696-106696
10.1016/j.sab.2023.106696
Earth, Planets and Space
巻: 75 号: 1 ページ: 0-0
10.1186/s40623-023-01887-4
巻: 75 号: 1 ページ: 1-19
10.1186/s40623-023-01789-5
Icarus
巻: 400 ページ: 115533-115533
10.1016/j.icarus.2023.115533
巻: 221 ページ: 105549-105549
10.1016/j.pss.2022.105549