研究課題/領域番号 |
22KJ0670
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補助金の研究課題番号 |
21J22234 (2021-2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2021-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
上田 有輝 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
2023年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2022年度: 400千円 (直接経費: 400千円)
2021年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
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キーワード | ホワイトヘッド / 価値 / エナクティヴィズム / 有機体論 / 進化の哲学 / 価値の経験 / 抽象 / 概念 / 胚胎的抱握 |
研究開始時の研究の概要 |
イギリス出身の哲学者ホワイトヘッド(1861-1947)のコスモロジーを、「抽象(abstraction)」概念から出発して総合的に分析する。彼は、哲学の陥りがちな知的抽象性を批判する一方、自然の過程に内在するという抽象作用を積極的に論じてもいる。「抽象」概念のこうした両義性は、彼が知性や思考、心性一般と自然の関係を根本的に捉えなおそうとしていたことを示している。テクストの内在的分析、およびラッセルら同時代の哲学との比較を通して、従来強調されてきた全体論的、有機体論的な自然観には還元できない、抽象を含み込んだ多元論的自然哲学として、ホワイトヘッドのコスモロジーを読解することを目指す。
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研究実績の概要 |
本年度は、2023年1月に開始したニューヨーク大学での研究滞在を9月まで継続し、現代の分析哲学における価値論の研究を行った。帰国後は、これまでのブリティッシュ・コロンビア大学、およびニューヨーク大学での研究をまとめる作業を行なった。とりわけ、ホワイトヘッドのいう「抽象作用」を価値享受に関わる概念として読解するという、昨年度に得た研究指針を引き継ぎつつ、自己を再帰的に維持・生産する生命プロセスや、生命有機体と環境の選択的相互作用を基礎として価値の存在論的な性格を明らかにすることは(どの程度)可能かという問いに取り組んだ。
2023年11月には、“The life-mind continuity thesis and organicist philosophies: A comparative reading of Nishida and Whitehead”と題した発表を行い、認知科学におけるエナクティヴィズムや、西田幾多郎の生命哲学との比較を通じて、ホワイトヘッドにおける価値享受論の可能性と限界を検討した。また、2024年6月には、「生命の自己維持は価値の源泉たりうるか:エナクティヴィズムと生の意味の哲学」と題した発表を行う予定である。どちらにおいても、自己を維持する再帰的プロセスとしての生命と、絶えざる成長や潜在性の発露としての生命という二つの生命観と、それぞれの価値論的含意の検討が焦点となる。
研究滞在中は新たな知見の吸収に努めたため、本年度中に形にすることのできた研究成果は限られている。現在、美的調和の経験を基盤として道徳的動機づけを説明するホワイトヘッドの価値論的戦略の当否を検討する論文を執筆中であるが、それ以外のものも含め、来年度も引き続き本年度行なった研究の展開に努める予定である。
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