研究課題/領域番号 |
22KJ0680
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補助金の研究課題番号 |
21J22345 (2021-2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2021-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分01030:宗教学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
犬塚 悠太 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,100千円 (直接経費: 3,100千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2022年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2021年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | 宗教シオニズム / ユダヤ教 / イスラエル / アブラハム・クック |
研究開始時の研究の概要 |
本研究はイスラエル国家建設を目指すシオニズム運動の一潮流である「宗教シオニズム」と呼ばれる思想の歴史的系譜・発展を明らかにしようとするものである。この思想はイスラエルにおける宗教右翼と強く結びつき、とりわけ70年代以降、入植活動から現代の政治にまでも影響をもたらしている。この思想を解きほぐすことによってイスラエル政治、パレスチナ・イスラエル問題、ひいてはイスラエルにおける現代のユダヤ教の展開を理解することができる。
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研究実績の概要 |
2023年度は前年に引き続き9月の末までイスラエルの文書館において資料調査を行い、メルカズ・ハラヴの図書館における資料の確認や、国立図書館・ヘブライ大学図書館での関連資料の収集、そのほか宗教系書店における書籍の購入を行なった。 2022年の選挙において宗教シオニストや右派勢力が議席数を伸ばし、その後「民主主義」を標榜することで最高裁判所の権限を弱める立法を行おうとした(司法改革)ために、国内の右派勢力と左派勢力の対立が先鋭化したこともあり、本年は宗教シオニストの政治思想と「民主主義」の関わりを調査した。その内容については、2023年度日本ユダヤ学会において「宗教シオニズム思想における国家像と『民主主義』」という題で発表を行なった。 明らかになったことは、第一にイスラエル建国直後には国家体制をどのように宗教的に位置付けることができるのかという点が大きな論点であったが、当時の神学的議論の中でラヴ・クックのレスポンサが文脈を無視して民主主義体制の擁護に利用され、現代宗教シオニズムのリーダーでもあるハイム・ドリュックマンにおいてもその解釈が存続しているということである。これは宗教シオニズムの思想史におけるラヴ・クック受容の一つの事例でもあり、それはラヴ・クックの意図から離れ、彼の言葉を文脈から取り外して利用するものであった。第二に明らかになったことは「民主主義」という言葉が、社会に対して自らの宗教的価値観の正当性・保護を主張する際の武器として機能しており、さらにその一方でそれは国家の政策を容認し彼らが妥協を行う際には弁解としても用いられてきたということである。やや矛盾するようでもあるが、宗教シオニズム勢力が時代的・社会的な状況の中でしばしば立場を変化させてきたように見えることを鑑みれば、むしろ彼らの言説における「民主主義」は、思想史を描く上では重要な論点になることが示唆された。
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