研究課題/領域番号 |
22KJ0714
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補助金の研究課題番号 |
22J00088 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分45030:多様性生物学および分類学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡村 悠 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | シロチョウ / フェロモン / QTL / ゲノム編集 |
研究開始時の研究の概要 |
生物の種分化において、他集団との交配を妨げる生殖隔離の進化は重要なステップであり、その遺伝的基盤の解明は進化生物学において中心課題のひとつである。一部の昆虫は性フェロモンを用いて交配相手を識別する。そのため、性フェロモンは種によって厳密に制御された化学プロファイルをもち、その進化は近縁な集団間における生殖隔離の成立に大きな影響を及ぼす。本研究では日本産の近縁なスジグロシロチョウとエゾスジグロシロチョウに注目し、そのフェロモン合成の分子的、遺伝的な基盤を解明する。また、近縁種が同所的に存在しないヨーロッパの個体群をもちいて、性フェロモンの進化と生殖隔離の強化との関連を検証する。
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研究実績の概要 |
二年目となる本年度は以下を実施した。 (1)トランスクリプトーム解析から候補遺伝子の同定(2)ゲノム編集による候補遺伝子の機能活性測定(3)異種発現系による候補遺伝子の機能活性測定(4)QTL解析のための交配実験 (1)については、二種のシロチョウの雌雄のサンプルから得たトランスクリプトームの解析を行い、オス特異的に発現が見られる候補遺伝子を探索した。そのうえ、近年利用可能となった近縁種シロチョウのゲノム配列から、これらの候補遺伝子を抜き出し種間比較するパイプラインを構築した。いくつかの候補遺伝子は、注目するフェロモンを合成する種に特異的に重複を起こしていることが明らかとなった。これらの候補遺伝子について、いくつかをピックアップしゲノム編集を用いてノックアウトを行ったところ、1つの遺伝子について注目するフェロモンの合成に関与することが明らかとなった。加えて、候補遺伝子のいくつかを大腸菌において発現させ、機能解析を行ったところ、こちらにおいても2つの遺伝子について注目するフェロモンの合成に関わる遺伝子を発見することができた。現在、これらの結果をまとめ、これらを補完するデータを収集しており、これらがまとまり次第、論文として投稿する予定である。(4)のQTL解析のための交配実験は昨年度に引き続き行った。2023年度は複数の個体群のペアを用いて交配実験行なったが、やはりF2の卵の孵化率が非常に低く、F2の成虫を十分得ることができなかった。トランスクリプトームから候補遺伝子を絞る方法が比較的機能している状況から、今後はQTLではなくゲノム編集や異種発現系によって候補遺伝子の機能解析を進めることでフェロモン合成に関わる遺伝子群を明らかにしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はトランスクリプトーム解析を主体として、フェロモン合成に関わる遺伝子の探索を行った。その結果、シロチョウのフェロモン合成に関わる遺伝子候補を複数見出すことができた。異種発現系による機能活性測定と、ゲノム編集により、これらの候補のうち、複数の遺伝子においてフェロモン合成に関わる活性を持つことが明らかとなった。加えて、ゲノム解析によってこれらの遺伝子は種特異的な重複パターンを持っていることがわかってきている。これらの新知見が得られたため、研究計画は順調に進んでいると考えており、追加の情報やデータを得た後に論文として発表することを予定している。
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今後の研究の推進方策 |
当初はQTL解析を主体として二種の近縁なシロチョウ間に見られるフェロモン組成の違いを生み出す遺伝的な領域を絞り込むことを予定していたが、F2の孵化率が非常に低かったことで困難であった。そのため、トランスクリプトーム解析を主体として手法に切り替え、いくつかの遺伝子について、フェロモン合成に関わる機能を発見することができた。今後はフェロモン合成系において他に重要となる遺伝子を探索することに加え、これまで見つかっている遺伝子については集団遺伝学的な手法を用いて進化解析を行う予定である。これらのデータを纏めて論文として発表する。
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