研究課題/領域番号 |
22KJ0742
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補助金の研究課題番号 |
22J00942 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 名城大学 (2023) 東京大学 (2022) |
研究代表者 |
安達 孝信 名城大学, 外国語学部, 助教
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | エミール・ゾラ / ユイスマンス / 自然主義 / 郊外 / 印象派 / パリ / ウエルベック / ラファエリ |
研究開始時の研究の概要 |
自然主義作家、特にエミール・ゾラ、ユイスマンスらが、1870年代から1880年代にかけてどのようにパリ郊外風景を「発見」していったのかという問いに、同時代の印象派絵画における二種類のパリ郊外の表象との関わりに注目して取り組む。 印象派絵画においてブルジョワの行楽地としてのパリ郊外風景画が主流となる一方で、それまでレアリスム絵画が取り組んできた社会批判としての労働者・貧民の暮らす場末の表象が後景化していく。自然主義作家たちはこのようなパリ郊外を巡る美学的変遷に敏感に反応し、単なる悲惨趣味としての郊外表象から脱した、新たな、現代的な場としてのパリ郊外を描きだしていく。
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研究実績の概要 |
今年度はパリ郊外の表象について主に二つの観点に注目し研究を進めた。 第一に、自然主義作家ユイスマンスが印象派美術批評を行う際に、手法には関心を持たずただ主題のみによって評価を決めているという通説を検討した。確かに、1880年前後に彼の称賛を受ける作品には労働者や郊外の工業地帯が描かれているといった主題的な共通点が見出されることが少なくない。その一方で、そのような自然主義的関心に近いと考えられる主題を描いた絵画の場合であっても、ユイスマンスはそれらを常に評価しているわけではない。主題、作風、どちらを基準としてもユイスマンスの美術批評に一貫した美学を見出すことは容易ではないが、それらの錯綜した主張には反ブルジョワ・イデオロギーという一貫性が認められる。本研究は大阪大学フランス語フランス文学会第91回研究会にて口頭発表(「ユイスマンスの印象派批評におけるブルジョワ批判と周縁擁護」)を行なった上で、質疑応答によって得られた知見を盛り込み論文「ユイスマンスと反ブルジョワ的美術批評」(Gallia, 第63号)として発表した。 第二に、エミール・ゾラの「郊外の詩学」の1870年代に入ってからの変化を明らかにするために、小説『パリの胃袋』におけるパリ郊外ナンテールの畑の場面を分析した。一般的には、この主人公が畑の中で穏やかな休日を過ごす場面は、その後のパリにおける物語の暗転を強調するための偽りの平穏にすぎないと説明される。その場面が実際にはゾラが60年代から取り組んできたロクス・アモエヌスという牧歌的恋愛に関わる文学的トポスの変奏であると指摘した上で、70年代においては、牧歌の否定から、生と死の、生産と消費のサイクルへとゾラの関心が移り、郊外の再評価が生じていることを示した。本研究を論文「エミール・ゾラ『パリの胃袋』における苦難のパリと再生の郊外」として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1870年代から1880年代初頭までの自然主義文学におけるパリ郊外の表象について、ユイスマンスの美術批評とゾラの小説作品の二つの側面から研究を進め、一定の成果が得られたと考えられる。ユイスマンスの美術批評については、印象派におけるパリ郊外の表象に関する美術史的研究成果を取り入れることで、文学と美術の垣根を超えた郊外の詩学の存在を示唆することができた。特にブルジョワ的な西郊を描く印象派、労働者的な東郊を描くレアリスム画家、といった美術における対立が、ユイスマンスとゾラの美術批評における評価軸にも影響を与えていることなど今後期待される研究課題を多く発見した。 ゾラの小説作品については、これまで明らかにしてきた1860年代の「郊外の詩学」と、1870年代以降の『ルーゴン=マッカール叢書』における郊外の詩学との間に違い、発展があることを示し、今後の研究の方向性が固まった。
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今後の研究の推進方策 |
令和六年度は、特にエミール・ゾラの1870年代の小説作品における郊外の詩学の変遷、発展を明らかにすることを目指す。『ムーレ神父の過ち』、『獲物の分け前』といった1870年代の小説を対象として、ゾラがどのようにロクス・アモエヌスというロマン主義的な牧歌の理想を捨て去りながらも、別の形でそれを常に作中に取り入れているかを示していく。60年代のゾラは現実のパリ郊外を描くことで、ロクス・アモエヌスを否定した。不思議なことに70年代以降の作品では、未だロクス・アモエヌスを想起させる牧歌的な描写は残っている。本研究においては、70年代のゾラがロクス・アモエヌスを生と死のサイクルという観点から再解釈することで、自らの自然主義的作品の中に居場所を与えていることを示していく。
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