研究課題/領域番号 |
22KJ0760
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補助金の研究課題番号 |
22J01468 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分43050:ゲノム生物学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
川崎 洸司 (2023) 東京大学, 定量生命科学研究所, 特別研究員(PD)
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特別研究員 |
川崎 洸司 (2022) 東京大学, 定量生命科学研究所, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | エンハンサー / 転写制御 / ライブイメージング / ショウジョウバエ初期胚 / 転写バースト |
研究開始時の研究の概要 |
遺伝子の発現はエンハンサーと呼ばれるゲノム上の調節領域によって制御される。興味深いことにエンハンサーは標的遺伝子から数十kb以上も離れた位置から転写を活性化できる。しかし、なぜ遠く離れたエンハンサーが標的遺伝子のプロモーターに作用することができるのか、その基本的な仕組みは未解明のままである。近年、エンハンサーが形成する転写因子の核内濃縮環境が、プロモーターと共有されることで転写が引き起こされる「転写ハブ仮説」が提唱されつつある。本研究では、ショウジョウバエ初期胚を用いた超解像ライブイメージング系やゲノム編集技術を駆使し、エンハンサーが形成する局所的な転写反応場の存在について検証する。
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研究実績の概要 |
ゲノム中の発現調節領域であるエンハンサーは、標的遺伝子から数十から数百 kbも離れた遥か遠くから転写を活性化できるという特筆すべき性質を持つ。本研究では、転写因子が天然変性領域(IDR)を介して濃縮された核内微小環境(転写ハブ)に着目する。こうした核内環境をエンハンサーとプロモーターが共有することで転写が制御される「転写ハブ仮説」を検証する。
本年度は、これまでに取得したライブイメージングデータのより詳細な解析を実施した。超解像顕微鏡解析から得られた3次元画像データから、エンハンサー上に形成される転写因子VP16のクラスターと標的遺伝子座の空間配置を経時的に追跡することが可能となった。その結果、遠位エンハンサーによる転写バーストの誘導時には一過的にVP16クラスターと標的遺伝子が空間的に近接する様子を捉えることに成功した。さらに、転写因子の持つIDRが分子クラスターと標的遺伝子間の近接確率を高め、より高頻度に転写バーストを引き起こすことに貢献している可能性が示唆された。また、新たに構築した多色蛍光観察システムを用いた解析により、エンハンサー上における単一の分子クラスターが2つの遺伝子によって共有されることで同調的な転写バーストを誘導することを明らかとした。 定量的な画像解析より、同調的な転写バーストが生み出される際には分子クラスターがより濃縮されていることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度に行なった詳細な解析により、転写因子の形成する核内クラスターがエンハンサーによる柔軟な転写制御機構に関して重要な役割を果たすという新たな知見を得た。さらに、複数遺伝子の多色蛍光観察系を新たに構築することで転写バーストの協調的な制御機構に関する新たな生命現象を観察することに成功し、当初の計画以上に研究が進展したと考えている。ここまでの研究成果をまとめ、Molecular Cell誌にて報告した。また、本研究で得られた知見を中心にエンハンサーによる遺伝子発現調節機構に関する総説を執筆し、Trends in Cell Biology誌にて報告した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの本研究の成果より、転写因子間における多価性相互作用が転写「反応場」の形成を促進することで、遠位エンハンサーによる転写バーストの誘導効率を大きく促進すること見出した。今後の研究では転写因子のIDRを介してエンハンサー領域で濃縮され、機能している分子群を同定する。これにより、転写反応場の形成を介したエンハンサーの機能メカニズムをより高い解像度で理解することを目指す。特に、転写反応の中心的な役割を担うRNAポリメラーゼIIの動態についてライブイメージング解析を行い、転写ハブ・転写バーストとの時空間的な関係性について明らかとする。
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