研究課題/領域番号 |
22KJ0762
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補助金の研究課題番号 |
22J01539 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分01040:思想史関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大林 侑平 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 官房学 / 自然哲学 / 自然権 / 信頼 / エコノミー / 知識の歴史 / 生物学史 / 社会認識論 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究のテーマは18世紀ドイツ語圏における官房学的言説の思想史的研究である。この研究は(1)思想史・知識史的分析、(2)理論的分析、(3)方法論の三つのアプローチを含む。 (1)官房学の根本概念であるエコノミーを起点に、その人間学的側面と自然哲学的側面に光をあて、銅時代の様々な実践との関連を解明・叙述する。 (2)19世紀に至るまで持続的影響力を持った自然哲学が、学問的・政治的・経済的要請、技術的変動との相互作用を、理論的分析を通じて剔抉する。 (3)以上の研究に対するメタ分析として、思想史・知識史の方法について、今日の社会認識論や関連分野を参照して新たな適切な叙述・分析の方法を検討する。
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研究実績の概要 |
本研究は官房学の思想史的研究、知識史の方法論を課題としている。今年度は18-19世紀を通じ、過去の出来事についての報告であるhistoriaというテクストジャンルが有用な知識へ変容する過程、およびテクスト上の変容に伴い認識的対象が変容する過程、そこから形而上学的解決が要請される過程を、自然法理論、自然哲学、人間学的言説におけるエコノミー概念、幸福概念と社会性概念の系譜を紐解くことで解明することを試みた。 査読付論文「悪の透明化:18世紀ドイツ語圏人間学的言説における認識的障害と不幸の文芸」では主知主義的な自然権概念の理解の根底にある弁神論的問題を踏まえ、文学作品や自然哲学、啓蒙的言説において狂気が幸福の感受可能性としての社会性の欠如として提示されていたことを論じた。 口頭発表「18世紀ドイツ語圏の知識史における官房学:家父書、訓示書から自然哲学まで」ではエコノミー概念、学殖者ネットワーク、そして官房学の構想の関係をhistoria的知識に着目して解明する試みた。また口頭発表「Evo-devoの一前史:19世紀ドイツの学術文化政策における生物学の状況を考慮して」では19世紀半ばより進化論的・機械論的に変容した生物学が技術変革や宗教的・政治経済的問題を背景にしていたことを論じた。 口頭発表「初期近代ドイツ語圏におけるhistoriaの諸問題」では初期近代にhistoriaが単なる事実報告的な知識からマニュアル的知識へ変容する過程を考察て論じた。さらに以上の事例を踏まえ、口頭発表「知識伝達と知識実践の認識論的問題:初期近代ドイツ語圏の言説を踏まえて」では18世紀のレトリックと信頼の問題を現代的な社会認識論の議論と重ねて、知識の歴史的叙述として知識の生産・移動・編成・消費の過程を対象としつつ、知識についての知識を編成する一種のメタ分析を含む方法として知識史方法論の洗練を図った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ここまでの進捗状況は概ね順調である。当初の研究計画・研究構想に沿って主題が設定され、それに応じた具体的な調査・議論を進めることができている。そしてその都度成果を公表することができている。また研究成果自体の累積は予定より早いペースで進んでいる。しかし以下の状況変化に時間を割く必要もあったため、論文化のペースが追いついていない。また2022年度中に応募した国際18世紀学会ローマ大会の初期キャリア研究者セミナーでの発表が2023年度中に予定されているなど、年度を跨いだ計画が進行している過程であり、2024年度末にこのプロジェクトが終了するまでに成果を概ね公表できるように努めていく。 前述の状況変化とは、2022年度3月よりエアフルト大学ゴータ研究センターに客員研究員として滞在することが決まったことを指す。当地の研究センターは初期近代の重要な研究拠点となっており、研究図書館には貴重な史料・収集品が多数収蔵されている。主にここを拠点としてドイツ各地で活動が可能となり、2023-2024年度の研究の基盤を固めるために必要な資料調査、文献収集、学術ネットワークの構築が可能となった。つまり、これを通じて補完できる情報によって、これまでの成果を改善した上で論文化したり、新たに獲得した情報を用いて新たな論文に着手したりすることが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度はゴータ研究センターに滞在する中で得られる資料や機会を利用し以下の問題の議論を深めるプロセスに注力する。また他のドイツ国内の研究機関に所属する哲学者とも協働する予定である。そして帰国後の2024年度は2023年度中に構想・整理した研究成果を邦語・欧語で公開するプロセスに注力する。すでに定めた通り研究課題は主に以下の三点からなる。 (1)官房学の基本概念であるエコノミーを起点に、その人間学的側面と自然哲学的側面に光をあて、同時代の様々な実践との関連を解明・叙述する。 (2)19世紀に至るまで持続的影響力を持った自然哲学が、どのように学問的・政治的・経済的要請、技術的変動と相互作用したかを理論的分析を通じて剔抉する。 (3)以上の研究に対するメタ分析として、思想史・知識史の方法について、今日の社会認識論や関連分野を参照して新たな適切な叙述・分析の方法を検討する。 (1)(2)では、16-19世紀ドイツ語圏の知識人ネットワーク、大学制度、実科(商科や工科など)の制度化を、形而上学や自然哲学の学説史、あるいは貨幣学や算術論、商業論、宗教的敬虔にまたがる複雑な言説を考慮に入れて研究する。(3)では、特に思想や書物、物品及び人が、移動を通じて社会的カテゴリーや理論的理解の水準でどのように変化を経験するか、あるいは移動がどのような認識的役割を担うかについての議論を、(1)(2)の事例をもとに深めていく。 以上16-19世紀まで持続的に展開する歴史哲学や自然哲学の基本概念が持つ思想史的・実践論的な背景を、歴史的状況と概念的系譜、そしてマテリアルの移動を通じた情報・知識のネットワーク化の分析を通じて解明し、またその方法論を情報・知識の概念の認識論的・社会認識論的議論を通じて洗練させることを目指し、学問と社会、国家の関係をめぐる一般的な議論の進展に貢献できる知見をまとめたい。
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