研究課題
特別研究員奨励費
トウモロコシから単離されたzeapyranolactoneとzealactone、lotuslactoneは、ストリゴラクトンと総称される天然有機化合物である。これらが植物生体内でどのように生合成されるかは憶測の域を出ていない。そこで、有機合成化学的視点から独自の生合成仮説を提唱し、それらを検証する研究を計画した。重要な生合成中間体などを化学合成し、生合成経路の実態に迫っていく。
ストリゴラクトン(SL)は多種多用な植物から単離・構造決定されている天然有機化合物であり、アーバスキュラー菌根菌と植物の共生シグナルとしての作用や、植物の枝分かれ抑制作用などが報告されている。SLは、アフリカにおいて根寄生雑草による甚大な農業被害をもたらす原因としても知られている。そのため、SLの未解明な生合成経路を解明する研究などは、根寄生雑草防除法開発に繋がる極めて重要な課題であると言える。これまでに申請者は、非典型的SLと呼ばれるzeapyranolactone(ZPL)/zealactone(ZL)およびlotuslactone(LL)に着目し、これらの未解明な生合成経路の解明に取り組んできた。そして、電子環状反応という化学反応を中心に、上記3つを含めたその他のSLの生合成経路を包括的に解釈することを最終目標としている。現在までに、ZPL/ZLに関する独自提唱の生合成中間体を調製できてはいないが、先行研究において支持されている生合成中間体からは、ZPL/ZLが生成しないことを示す有機合成化学的な結果が得られている。また、LLについても実験は難航しているものの、化学構造を簡略化したモデル基質による検証で、LLに特有の部分構造が電子環状反応を経て生成していることを示唆する結果が確認されている。電子環状反応に基づくSL生合成の包括的な解釈を行うためにはより一層の実験データが求められるが、当該研究成果はSLの未解明生合成経路に対して有機合成化学的視点から強力な示唆を与え得るものであり、一定の成果であると考えている。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 オープンアクセス 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件)
bioRxiv
巻: -
10.1101/2023.08.07.552212
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