研究課題/領域番号 |
22KJ0795
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補助金の研究課題番号 |
22J11210 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分90150:医療福祉工学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
竹内 雅樹 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 電気式人工喉頭 / ニューラルネットワーク / 機械学習 / 振動子 / 振動音 |
研究開始時の研究の概要 |
喉頭がんなどの病気により失われた声を取り戻せるウェアラブルデバイスを開発します。従来から存在するEL(電気式人工喉頭)という円筒型のデバイスは発声時に片手が塞がり、ロボットのような無機質で機械的な音声しか出せず、日本で市販されてから20年以上デバイスの見た目が変わっていないという問題があり、患者さんは悪目立ちしたくないことから、使用を避けてきました。そこで我々はハンズフリーで発声時に両手が使えて、かつヒトに近い声を発声でき、日常生活で使用しても悪目立ちしないデバイスを開発します。本研究では、よりヒトの声に近づけられるように振動音の改良を目指します。
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研究実績の概要 |
まずハンズフリー型のELを開発する上での一番の問題になっている振動音の漏れの原因がどこにあるかを探った。すると現在使用している振動子、ならびに現在の振動音の作製方法に問題があることが分かった。そこで複数の振動子ならびにファンクションジェネレータを購入して、電圧ならびに周波数を変化させて実際に購入した振動子に正弦波を加振して、首に当てて、実際にどのように聞こえるかを音声と映像を記録して比較実験を行った。その結果、100Hzから1000Hz全てにおいて満遍なく明瞭な声となりかつ振動音漏れの少ない振動子は無かった。そのため、研究実施計画を変更し、振動音の作成方法をLPC残差波を用いた方法でなく、ニューラルネットワークモデルを用いて機械学習を行い作成する、という方針に変更した。この理由は先述した比較実験において、音量、重さ、必要となる電力のすべての条件で従来の電気式人工喉頭に使用されている振動子の性能を超えられる振動子が見つからなかったためである。振動音を良くすることで振動子については一般化できる、すなわちどの振動子を用いてもより明瞭な声で届けられることを目的としている。現時点で振動音を作成するためのニューラルネットワークモデルは様々な改良をしており、次年度中にこのモデルを用いて作成した新たな振動音を用いて、開発したデバイスの客観的評価を行う予定でいる。ユーザーテストまでこぎつけて、主観的評価までできれば論文や国際会議での発表も可能になると考えている。また、自動で振動音のON/OFF制御を可能にするということについては、自動ではないが、曲げセンサを用いて首を曲げるだけでハンズフリーで振動音のON/OFFを制御できる機構を今年度中に作成することができた。そして今年度は2本国内誌で(そのうち1本は英訳され英語論文誌で)論文が掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究目的(4)のハードウェアの改良としては首を曲げるだけで振動音のスイッチがONになるような機構の物を作成し、目指していた完全なハンズフリーで発声ができるという1つの目標は達成できた。しかしながら、2年間の研究計画で完成まで考えていた研究目的(1)、(2)、(3)に関しては、先述したように複数の振動子を用いたシステムから振動音の作成方法の改良に、令和4度中に研究の方針転換を行った。しかしまだ振動音が完成しておらず、令和4年度中の終了を考えていた従来のELとの実計測データによるSN比を用いた客観的な比較実験ができていないことから、少し遅れていると判断をしている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究課題の推進方策はニューラルネットワークモデルを用いた電気式人工喉頭での振動音の作成手法の確立という方針に変更をする。この研究計画の変更に関しての問題点は、振動音の作成後に令和4年度中の実行を考えていたSN比を用いた客観的な比較実験と、令和5年度中の実行を考えていた実際に声を失った喉頭摘出者に、開発したデバイスを装着して話してもらい、評定尺度法を用いた評価および装着感のインタビューという主観的な比較実験の両方を進めなければならないということである。しかしこれに関しては、従来行うはずだった研究目的(1)(2)(3)を実現する機構の作成に用いるはずであった費用を、主観的実験と客観的実験を両方並行に進めるための実験協力者への謝金として使用することにより、研究目的の遂行が可能になると考えている。
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