研究課題/領域番号 |
22KJ0834
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補助金の研究課題番号 |
22J11975 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分16010:天文学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
安藤 誠 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 銀河団 / 原始銀河団 / 銀河の形成・進化 / 光赤外線天文学 |
研究開始時の研究の概要 |
銀河の成長と周囲の環境とは密接な関係があり、宇宙で物質が最も密に集まった領域である銀河団は、高密度環境における銀河進化を調べるのに適した領域である。銀河団における銀河の成長史の理解には成長途上の銀河団、すなわち原始銀河団を調べる必要がある。本研究では可視光から近赤外線にわたる大規模な銀河サーベイのデータから、原始銀河団をこれまでになく大量に同定し、そこに属する銀河の性質をより低密度な環境にある銀河の性質と比較する。この比較に基づいて、高密度環境において銀河の成長を促進・抑制する物理機構が何かを明らかにする。
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研究実績の概要 |
今年度は、もともと使用予定であった可視光から赤外線のデータを含んだ解析済みの銀河カタログの公開が想定より遅れたため、本課題の準備段階と位置付けて取り組んでいた可視光データのみを用いた原始銀河団探査の結果をまとめた。この研究では、赤方偏移1.5の時代(今から約100億年前)に存在する原始銀河団候補を大量に(>5000個)発見することができた。これら原始銀河団候補に属する銀河は、より低密度な領域に存在する銀河と比べて星形成を停止しているものの割合が高く、特に大きな星質量を持つ銀河についてこの傾向が顕著であることがわかった。この結果は、成長した原始銀河団の中心部において、星形成の材料となる冷たいガスの流入が阻害されるというシナリオで説明可能である。また、原始銀河団領域で見られる星形成を停止した銀河の割合の超過は、より後の時代に存在する成長した銀河団で見られる超過と比べて小さいことがわかった。これは(原始)銀河団領域における銀河の星形成の停止が、赤方偏移1(今から約80億年前)以降の時代に顕著になることを示唆する。
そこで、成長した銀河団で銀河の星形成の停止がどのように進行するのかを調べるため、赤方偏移0(現在)から1の時代に存在する既知の銀河団のデータを用いて、星形成を停止した銀河の分布を調べた。その結果、銀河団中心部に存在する巨大銀河に対して、星形成を停止した銀河は特定の方向に偏って分布していることを発見した。このことは、銀河団内部を満たす高温プラズマが銀河の星形成活動に及ぼす作用が、銀河団の中で非等方的に働く可能性を示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた、可視光から近赤外線までを含む観測データを用いた原始銀河団の探査は進まなかったものの、代替となる可視光データのみを用いた探査により、原始銀河団銀河の進化シナリオに制限をつけることができた。またこの結果を受けて、より成長した銀河団における銀河進化に着目した新しい研究も進展した。以上の研究からそれぞれ1報、計2報の査読付き学術論文を出版することができた。したがって、研究は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
可視光だけでなく、近赤外線のデータも含めた原始銀河団の探査を進める。これにより、銀河の赤方偏移や星形成率の推定に含まれる不定性を減らし、原始銀河団環境が銀河に与える作用をより強固に検証することができる。また今年度の成果から、銀河団銀河の進化を理解するには成長後の銀河団を詳しく調べることも重要であると再認識をした。そこで、より低赤方偏移(z<1)の銀河と環境との関係についても詳しく調べていきたい。
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