研究課題/領域番号 |
22KJ0841
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補助金の研究課題番号 |
22J12125 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
川上 聖司 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 老化 / 脳 / 神経細胞 / p16 / 単一細胞RNA-seq / 老化細胞 / 神経変性 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、加齢に伴う生理機能の低下、いわゆる「老化」のメカニズムの1つとして、臓器への老化細胞の蓄積が、個体老化や疾患を引き起こす可能性が示唆された。しかし中枢神経組織の、特に神経細胞の細胞老化についてはその存在や老化への影響は未知である。 本研究では、全身の恒常性の維持に中心的な役割を果たす中枢神経系において、特に神経細胞が細胞老化し、脳機能の低下や全身の加齢性疾患が引き起こされるという仮説に基づき、老化神経細胞の同定とその性質について解析する。神経細胞の老化を制御するメカニズムを明らかにすることで、老化神経細胞を標的として全身の老化を改善する介入法を探索する。
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研究実績の概要 |
近年、老化や加齢性疾患のメカニズムの1つとして、臓器への老化細胞の蓄積が着目されている。本研究では、特に脳組織に蓄積する老化細胞の同定とその性質の理解を目指した。 老化細胞のマーカー遺伝子p16を高発現する細胞をin vivoで可視化できるp16-tdTomatoマウスを用いて老齢マウス脳におけるp16高発現細胞を同定したところ、その多くが神経細胞であることを見出した。加齢に伴うp16高発現(p16-high)神経細胞の特性を理解するため、単一細胞RNA-seq解析を行った。解析に際して、脆弱な神経細胞の蛍光選別およびRNA-seqを可能とすべく手法の改良を行い、高解像度のデータを得た。単一細胞RNA-seq解析の結果、加齢に伴い脳内に蓄積するp16-high神経細胞の中に、特にストレス応答やアルツハイマー病(AD)に関連する遺伝子変化を示す新規細胞集団(高ストレスp16-high神経細胞)を同定した。 次に、高ストレスp16-high神経細胞はタンパク質凝集をはじめとするストレスによって蓄積が促進されると考え、ADモデルマウスを導入して仮説を検証した。ADモデルマウスでは、若齢である3か月齢の時点で有意にp16-high神経細胞が蓄積しており、やはりタンパク質恒常性の破綻はp16-high神経細胞の蓄積を誘導することが明らかとなった。さらに、ADモデルマウスの病態が進行するとともに特にp16-high神経細胞に選択的な細胞死がみられ、p16-high神経細胞の細胞死が細胞外Aβの蓄積につながる可能性が示唆された。ADと並行し、遺伝的な神経発生疾患のモデルマウスについても解析を行い、やはりp16-high神経細胞が蓄積していること、およびp16-high神経細胞に対して特定の転写因子群を発現させることで寿命を延長できることを見出した。
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