研究課題/領域番号 |
22KJ0858
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補助金の研究課題番号 |
22J12362 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分43010:分子生物学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
平井 誠也 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 自然免疫 / IFI16 / DNAセンサー / クライオ電子顕微鏡 |
研究開始時の研究の概要 |
生物はウイルスをはじめとする病原体の感染をいち早く察知し、それらを排除する仕組みとして自然免疫系を有している。自然免疫におけるDNAセンサーIFI16はウイルスDNA(非自己DNA)を感知し炎症応答経路を活性化する。一方で、細胞核内における自己の染色体DNAに対する自己免疫応答を回避すると考えられている。しかし、その詳細な分子機構は不明である。そこで本研究では、クライオ電子顕微鏡解析、および生化学的解析を行うことで、IFI16が染色体DNAを自己DNAとして認識する機構の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
生物はウイルスをはじめとする病原体の感染をいち早く察知し、それらを排除する仕組みとして自然免疫系を有している。自然免疫におけるDNAセンサー分子IFI16は、ウイルスDNA(非自己DNA)を感知し炎症応答経路を活性化する。しかし一方で、細胞核内には自己の染色体DNAが存在するため、IFI16は自己と非自己のDNAを正確に識別しなければならない。これまでにIFI16は染色体を自己DNAと認識することで、自己免疫応答を回避すると考えられてきた。ところが、IFI16が染色体DNAのどのような特徴を認識し、免疫応答活性を抑制しているのかは依然として不明なままである。近年の研究から、IFI16が自己免疫疾患や癌などの疾病に関与することが報告されており、IFI16による自己、非自己DNAの識別機構の解明が期待されている。そこで本研究では、染色体DNAの実体であるクロマチンとIFI16の相互作用に着目し、構造生物学的、および生化学的解析を行うことで、IFI16が染色体DNAを自己DNAとして認識する機構の解明を目指している。 2022年度はIFI16の精製を実施した。その結果、大腸菌発現系を用いることでIFI16を高純度に精製することに成功した。また、精製されたIFI16を用いて生化学的なアッセイとクライオ電子顕微鏡解析を行うことで、IFI16とクロマチンの相互作用について解析した。結果として、IFI16がクロマチンにおける特徴的なDNA構造を認識していることを示唆する結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、IFI16が染色体DNAを自己DNAとして認識する機構を解明するために、生化学アッセイとクライオ電子顕微鏡を用いた構造生物学的解析を行うことを予定していた。はじめに、IFI16の精製系を確立するために大腸菌発現系用のDNAコンストラクトの構築、および精製法の検討を行ったところIFI16を高純度に精製することに成功した。IFI16の精製系を確立したことにより、以降のクライオ電子顕微鏡解析、および生化学アッセイを行う準備が整った。続いて、クライオ電子顕微鏡解析を行うために、電子顕微鏡観察用試料の調製法を検討した。具体的には、電子顕微鏡観察用グリッドを作製する際の試料の凍結処理により、目的のタンパク質の構造が崩壊してしまうことを考慮して、架橋剤によるタンパク質分子の安定化処理を行った。この際、使用する架橋剤の種類および濃度、溶媒の体積などを変化させ様々な条件を検討した。安定化処理後の試料を用いて、様々な凍結条件で電子顕微鏡観察用グリッドを作製した。作製したグリッドを用いて試料をクライオ電子顕微鏡により観察し、氷の厚さや目的のタンパク質粒子の分布等を基に適切な凍結条件を決定した。 さらに、複数の試料作製条件で作製されたグリッドを用い、クライオ電子顕微鏡で1万枚以上の電子顕微鏡画像を取得し、立体構造解析を行った。また生化学アッセイにより、IFI16とクロマチンの相互作用解析を行った。以上の構造生物学的、および生化学的解析の結果から、IFI16がクロマチン中の特徴的なDNA構造を認識していることが示唆された。この知見は、IFI16の自己DNA認識機構を解明する上での重要な足掛かりとなる。以上の達成状況を鑑みて、本研究は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度のクライオ電子顕微鏡解析の結果、IFI16の低分解能構造を得ることに成功した。しかしながら、IFI16の重要なアミノ酸残基、およびドメインを同定するために十分な分解能に達していない。この原因として、電顕観察用試料作製の際に目的のタンパク質構造が壊れやすく、解析に十分な粒子数が得られていないことや、IFI16が溶液中でフレキシブルに運動しており、多様な構造をとっていることが考えられた。そのため、2023年度は電顕観察試料の安定性の向上を目標とする。 具体的には、試料作製に用いる架橋剤の最適化や、IFI16に結合する別のタンパク質の追加等を検討し、IFI16の安定性をさらに向上させることを考えている。以上の方法により、観察試料調製の最適化を行い、高分解能構造の決定を目指す。 また上記の方策と並行して、IFI16の各ドメインのトランケーション変異体を調製し、クロマチンとの相互作用解析を行うことで、IFI16の染色体DNA認識に重要なドメインを同定する。これらの解析の結果から得られたデータをまとめ積極的に学会等において発表する。
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