研究課題/領域番号 |
22KJ0885
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補助金の研究課題番号 |
22J12841 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分30020:光工学および光量子科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小松 憲人 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | メタサーフェス / コヒーレント受信器 / ナノフォトニクス |
研究開始時の研究の概要 |
光フェーズドアレイは三次元光イメージング用途で活用が期待されている半導体素子である。本研究では従来のビーム走査とは異なる、ランダム照明を利用した方式で光フェーズドアレイによる高精細な三次元イメージングを実証することを目的とし、実用化へ向けた複数の課題を解決することを目指す。 加えて、光フェーズドアレイと同様の光波面制御素子である誘電体メタサーフェスを用い、光通信用受信器を高性能化する研究を行っている。提案する構造は従来よりも小型化が可能で、空間方向の自由度を活用する空間多重通信に容易に適用可能である。メタサーフェス素子を作製し、世界初の表面入射型空間多重コヒーレント受信器の実証を目指す。
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研究実績の概要 |
光フェーズドアレイに関する検討とともに、同様の光波面制御素子として、誘電体メタサーフェスの活用に関する研究を推し進めた。メタサーフェスは2次元平面内の偏波、位相を任意に制御できる垂直入射型素子で、レンズやホログラフィといったイメージング分野を中心に広く研究が行われている。私はメタサーフェスの光通信応用に着目し、コンパクトかつ空間多重化に対してスケーラブルな偏波多重コヒーレント受信器を提案した。従来は複雑な光学系や導波路型光集積回路で構築されていた光波変換をメタサーフェス1枚で実現し、必要なフォトディテクタ(PD)も従来の8個から5個に削減した。さらに、空間光学系の線形性を活用し、PDの数を増やすだけでマルチコアファイバによる空間多重通信に拡張できるという大きな利点を持っている。 本年度は線形代数に基づいた受信感度の理論的な考察から始め、提案する受信器を実現するためのメタサーフェス設計方法を構築した。次に、SOQ(silicon on quartz)基板を用いて微小なシリコン楕円柱からなるメタサーフェスを作製する技術を開発した。電子線リソグラフィによるパターニング方法に加え、複数のエッチング手法の条件を調整し、垂直性、再現性の良い作製手法を確立した。さらに、作製したメタサーフェスを評価するための空間光学系を構築して作製した素子を評価し、設計とほぼ同一の強度、位相、偏波特性を得ることに成功した。 本年度得られた成果は光学分野で代表的な国際学会であるCLEO (Conference on Lasers and Electro-Optics)に投稿し、口頭発表予定。また複数の国内研究会、シンポジウムにて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は光フェーズドアレイを中心とした研究を実施する予定であったが、同様の波面制御技術であるメタサーフェスを活用する技術には偏波を制御できるなどより広い可能性があり、かつ学術界においても最近非常に盛り上がっている分野であるため、メタサーフェスを研究の柱とすることとした。 1年間でメタサーフェス素子の設計、作製、評価手法を確立し、表面入射型の偏波多重コヒーレント受信器を初めて実証するなど、当初の計画以上に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、高速フォトディテクタアレイを設計、作製し、本年度作製したメタサーフェスと組み合わせることで高速コヒーレント受信器を構築し、大容量伝送の実証を行う予定である。 そして、マルチコアファイバを用いることで空間多重コヒーレント受信器としての動作を確認し、提案手法の空間多重化に対するスケーラビリティを実証する。 さらに、メタサーフェスの持つ自由度を最大限活用し、新たな機能を付与した受信器構成についても検討中である。
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