研究実績の概要 |
双有理幾何学は代数多様体を双有理同値に基づいて分類する分野である. 双有理幾何学における重要な特異点のクラスとして川又対数的端末特異点や対数的標準特異点などがある. 正標数では特異点解消の存在が証明されていないなどの理由で標数0と同じ手法を用いることが出来ない. そこで, フロベニウス写像を用いて特徴付けられるF特異点論が有用な理論であることが分かっている. F特異点論では, F正則特異点やF純特異点などが重要なクラスである. 標数0の問題を正標数に帰着する手法としては正標数還元が一般的である. しかし, 環の射の純性などは正標数還元によって保たれない. そこで別の手法として超準解析に着目した. Schoutens は超準的な手法を可換環論に応用し, 代数多様体の特異点を研究した. 以前の研究において私は彼の手法を拡張し, 乗数イデアルの超準的な記述を与え, 等標数0におけるある種の巨大Cohen-Macaulay代数を用いて定義したBCM判定イデアルが乗数イデアルと一致することを示した. 令和5年度の研究では上の結果を随伴イデアルの場合および稠密F純型特異点の場合に拡張した. 証明において、反標準環が有限生成な場合には正標数におけるBCM随伴イデアルが因子的判定イデアルと一致することを用いている. この応用として, 正規多様体X, 素因子DとDを成分に持たない有効Q因子Δからなるペア(X,D+Δ)のDに沿った純対数的端末特異性が純な射の下で降下すること及びQ-Gorenstein局所環の稠密F純性が純な射の下で降下することを示した. Δ=0の場合はZhuangにより既に示されており、本研究ではそれを一般化することが出来た.
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