研究課題/領域番号 |
22KJ0940
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補助金の研究課題番号 |
22J14271 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分61020:ヒューマンインタフェースおよびインタラクション関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
畑田 裕二 東京大学, 情報学環, 助教
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2023年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2022年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | アバター / 自己の本来感 / 物語的自己 / ユーザー受容性 |
研究開始時の研究の概要 |
アバタは、ある環境と相互作用するためにユーザが用いる、実身体とは異なる身体表象である。アバタはコミュニケーションの手段に留まらず、個人のアイデンティティ形成にも寄与する。本研究の目的は、ユーザが自身のアバタと結ぶ多様な心理的関係性を明らかにし、アバタがユーザの認知・行動を変化させる効果の機序と、その個人差の心理的・環境的要因の一端を解明することである。そのために、実験室実験における定量評価に留まらず、現場のユーザへのインタビュー等を通じた質的手法を用いる。またこれに基づいて、多様なアバタが共生する社会で起こり得る心理的問題を整理し、適切なアバタコミュニケーションのガイドラインを構築する。
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研究実績の概要 |
本年度は,(A)ユーザと身体化アバタの心理的関係の分類,および(B)身体化アバタとの心理的関係がアバタによる認知・行動変容に及ぼす影響の解明に関する研究を進めた.
まず,アバタが人の認知や行動を変容させる技術であることを解説した講義の受講者に,アバタを用いて「なりたい自分」や,その際に考えられる懸念などをテーマにしたエッセイ課題を実施した.その結果,受動的,瞬間的,努力なしに「ゴール」として与えられたアバタとしての自己には偽物感がつきまとうとして抵抗を示す参加者が見られた.またアバタとしての自己に本来感を得るためには,アバタの特性を自ら獲得する「プロセス」や物語が物語的自己として適切に統合される必要があることが示唆された.このことから,ユーザと身体化アバタの心理的関係を形成する要因として,先行研究で指摘されていた「親密さ」や「主体感」のみならず,自己とアバタの物語の連続性に関する次元が重要になると考えられる.
また,外出困難者である従業員がロボット「OriHime」を遠隔操作することで接客等のサービスを提供する「分身ロボットカフェ」で働くユーザを対象とした半構造化インタビューを実施し,彼らがアバタを通じて経験した自己の変容について調査した.得られた語りについて質的な分析を行った結果,まず,アバタ体験は,どのような場所に置かれるか(アバタを気遣う他者が周囲にいるか等)によって大きく異なることが示唆された.さらにOriHimeというアバタは,それまでユーザの生活において安定的に維持されてきたパラメータ(例えば身体特性)を部分的に匿名化・編集することで,現在や未来を規定していた条件付けを解除し,改めて未来に対する展望を開き直すのだと考えられる.ここから,アバタ体験がユーザの自己概念を変容させることは,ユーザの過去・現在・未来に対する時間的展望の変容と関わっていることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インタビューではなくエッセイ課題を用いたり、VRSNSユーザではなく実環境におけるロボットアバタユーザへのインタビューを行ったりなど、当初の計画とは異なる方法論が採用された一方で、そうした研究の成果として、ユーザと身体化アバタの心理的関係を形成する要因として,先行研究で指摘されていた「親密さ」や「主体感」のみならず,自己とアバタの物語の連続性に関する次元が重要になることが示唆された.これによって物語的自己 [Gallagher 2000]や時間的展望という観点が導入されたことで、ユーザがアバタ体験を通じて経験する自己変容について探究することが可能になった。あるアバタ体験をしている際にユーザが抱いている時間的展望は、ユーザとアバタの心理的関係においても重要な役割を果たすと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
当初研究計画に記していたように、VRSNSユーザ同士の対話を参加観察法やインタビュー調査に基づいて質的に調べるとともに、アバタと自己の心理的結びつきの強弱によって、相手に対する発言や行動の利己性が変化するかを評価するような実験室実験を行う。これらを通じて当初の計画通り、多様な身体かアバタが共生する社会で、各ユーザのアバタに対する認識のずれが生み出す問題点を洗い出し、それらの対処法を検討する。得られた知見をアバタの社会活用という観点からまとめ、アバタを介したコミュニケーショントラブルを予防するためのガイドラインを構築する。
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