研究課題
特別研究員奨励費
前年度より構築していたモデルを拡張し、彗星大気の2次元モデルを構築する。構築したモデルはひさき衛星による極端紫外光分光観測データとの比較によりパラメータの調整を行う。構築したモデルを用いて、表層の物質濃集領域と大気中の物質分布の関係性について相関係数等を用いて定量的に議論する。また、これらを踏まえてComet Interceptorミッションに向けた光学観測装置の開発も行う。また、希薄大気の物理の一般的な理解の促進のため、必要に応じてMESSENGER探査機やBepiColombo探査機による水星大気の観測データの解析等を行うことも検討している。
長周期彗星の化学進化を明らかにする上で、その大気の物理過程を明らかにする必要がある。しかし、彗星の核および周辺宇宙空間環境のデータが不足しており、その大気の密度分布と表面組成・宇宙空間環境の関係の解明には困難が伴う。そこで本年度は、水星を題材に希薄大気と表層元素組成および宇宙空間環境との関係性を議論した。水星は彗星と大気の性質が類似しており、MESSENGER探査機により表層の元素組成分布や周辺のプラズマ環境が詳細に観測されている。また、日欧共同水星探査計画BepiColomboが現在進行形中であり、観測データが取得されている最中である。BepiColombo搭載紫外線分光器PHEBUSの水星スイングバイ中のデータを解析するため、本研究ではフランスの研究所に合計4ヶ月間滞在してPHEBUSのPIチームと共同研究を行った。まず、ダーク測定や恒星観測のデータを用いて観測装置の較正を行い、データの1次処理手法を確立した。続いて確立した手法を用いて背景光成分や雑音を除去し、スイングバイ中の水星Mg大気の空間分布を明らかにした。これと共同研究者が開発した水星Mg大気モデルを比較すると、今回の観測と数値計算の結果が非常に整合的であった。ここから、データの1次処理手法が正常に機能していることおよび、MESSENGERによる過去の水星探査時とMg大気の数密度分布が大きく変化していないことを明らかにした。また、MESSENGERでは観測されなかった水星夜側におけるMg大気分布を描き出し、微小隕石の衝突により大気が放出されているという従来の理解が夜面でも成立することが分かった。BepiColomboは2024年度中に残る3回の水星スイングバイを行い、2025年12月に水星周回軌道に投入予定である。本研究は、今後の本格観測開始に向けた解析手法の確立や観測計画の最適化の面からも重要な成果である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (24件) (うち国際学会 8件、 招待講演 2件)
UVSOR Activity Report
巻: -
惑星圏研究会2024集録
Earth, Planets and Space
巻: 75 号: 1
10.1186/s40623-023-01929-x
惑星圏研究会集録
日本惑星科学会誌 遊・星・人
巻: 32
Nature Communications
巻: 13 号: 1 ページ: 6609-6609
10.1038/s41467-022-34224-6