研究課題/領域番号 |
22KJ1001
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補助金の研究課題番号 |
22J20090 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
橋本 譲次 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
2024年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2023年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2022年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
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キーワード | ギリシア悲劇 / ソポクレス / ピロクテテス / 人物造形 / Linguistic Approach / Cognitive Approach / characterization / 西洋古典学 / 西洋古典 |
研究開始時の研究の概要 |
ソポクレスの悲劇『ピロクテテス』に存在する「二重の結末」という解釈上の問題について新たな解釈を提示することを目的とする。「二重の結末」は登場人物の人物造形に関わる問題であるため、『ピロクテテス』の登場人物がどのような人物として描かれているのかという人物造形の理解を確立する必要がある。まずテクストに基づいて演出を可能な範囲で復元し、人物造形に対する演出の影響を明らかにする。次に、『ピロクテテス』以外の現存悲劇作品や作品断片の人物造形との比較という広い視点から、『ピロクテテス』の人物造形を理解することを試みる。以上を踏まえて人物造形の理解を確立し、そこから「二重の結末」の新たな解釈を目指す。
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研究実績の概要 |
本年度は、近年ギリシア悲劇研究において注目されているアプローチそのものについて理解を深めること、そしてそのアプローチを用いてソポクレス『ピロクテテス』の人物造形を考察することに取り組んだ。まず近年の悲劇研究、特に人物造形研究において注目されているLinguistic ApproachやCognitive Approachという手法について知見を深めた。Linguistic Approachとは、社会言語学や語用論、会話分析などの近代言語学の知見を取り入れて、作品解釈をおこなうアプローチであり、Cognitive Approachとは、認知科学の知見に基づいて、人間の認知プロセスなどの側面から作品解釈に迫る手法である。近年のアプローチ理解についての成果は、ギリシア・ローマ演劇研究に語用論を応用したPragmatic Approaches to Drama: Studies in Communication on the Ancient Stageという論文集の書評という形で『西洋古典学研究』に発表した。また、近年注目されているアプローチの『ピロクテテス』研究への応用に関して、オックスフォード大学(8月14日)でおこなわれた研究会において研究発表をおこなった。その研究発表では、Cognitive Approachの視点を取り入れることで、『ピロクテテス』内の暗黙の存在として感じられるアキレウスが観客・読者のリード及びミスリードを誘うメカニズムとして機能している点に注目した。また、一ヶ月の英国滞在中に、ボドリアン図書館などで、日本の研究機関に所蔵されていないギリシア悲劇関連の文献を中心に収集を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず近年ギリシア悲劇研究において注目されているアプローチ理解に関しては、悲劇の人物造形研究において注目されているLinguistic ApproachやCognitive Approachという手法について知見を深めた。その成果に関しては、ギリシア・ローマ演劇研究に語用論を応用したPragmatic Approaches to Drama: Studies in Communication on the Ancient Stageという論文集の書評という形で『西洋古典学研究』に発表した。 また、近年注目されているアプローチの『ピロクテテス』研究への応用に関しては、オックスフォード大学(8月14日)でおこなわれた研究会において、Achilles’ (Mis)leads in Sophocles’ Philoctetesという題で発表をおこなった。その研究発表では、Cognitive Approachの視点を取り入れることで、『ピロクテテス』の観客・読者が、作中の登場人物と同様にそれぞれのアキレウス像を構築し、その像をリードあるいはミスリードとして作品解釈をおこなっているということを指摘した。 上記の研究会参加の折、英国に約1ヶ月滞在したので、ボドリアン図書館などでギリシア悲劇関連の研究資料、特に日本の研究機関に納められていない文献を中心に収集することができた。また、英国滞在中に、上記論文集の編者の一人である、チューリッヒ大学のGunther Martin教授とお話しする機会に恵まれ、ギリシア悲劇への最新のアプローチについて意見交換をおこなうことができた。総じて、今年度の英国滞在は、本研究の進捗に有益な機会となった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度もソポクレス『ピロクテテス』内の登場人物の人物造形について研究をおこなう。本年度は、近年の人物造形研究において注目されているLinguistic ApproachやCognitive Approachという手法についての理解を深めつつ、それらの『ピロクテテス』研究への応用を目指した。Cognitive Approachに関しては、『ピロクテテス』の人物造形理解への応用について研究発表をおこなうことができたが、Linguistic Approachに関しては、応用の段階に至らなかった。そのため、本年度は、特に作中の登場人物の「成長」という人物造形に関わるモチーフについて、Linguistic Approachの観点から研究し、論文を執筆することを目指す。この研究に必要な文献を、科研費を用いて購入する。
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