研究課題/領域番号 |
22KJ1008
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補助金の研究課題番号 |
22J20318 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分45020:進化生物学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
今野 直輝 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2024年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2023年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2022年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | 進化予測 / 機械学習 / 遺伝子水平伝播 / 薬剤耐性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は生命システムの進化における系統間に普遍的なルールを発見し、医学・生物工学に応用することを目的とする。前年度までに確立した遺伝子獲得・欠失によるゲノム進化の予測手法Evodictorを活用して薬剤耐性遺伝子を未来に獲得する確率が高い種を予測しデータベース化する。同時に、その予測に寄与している情報を調べることで耐性遺伝子の獲得に先んじて獲得されやすい遺伝子を同定し、さらにその遺伝子をノックアウトした大腸菌株を用いて実際に薬剤耐性遺伝子を獲得しにくくなっているのかを実験検証する。
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研究実績の概要 |
本研究では、遺伝子獲得/欠失による生物の進化は予測できるのか、そしてその進化の予測をいかにして医学や生物工学の応用研究に活かせるのかを探求する。ドライ解析とウェット実験を組み合わせ、次の3つの課題に取り組むことを目的としている:(1)ゲノム情報が豊富であるバクテリアを対象に、各遺伝子の獲得/欠失の予測を行う機械学習の手法を開発する。 (2)薬剤耐性遺伝子の獲得の未来予測を行い、将来に耐性株が出現する危険性の高い種を明らかにする。 (3)遺伝子獲得の未来予測と遺伝子導入実験の結果を比較し、進化のパターンの背後にあるメカニズムを実験的に検証する。 昨年度までの研究の過程で我々は機械学習を用いて数億年以上にわたる原核生物の長期進化の過程における遺伝子獲得・欠失の順序のパターンを学習できる機械学習フレームワークEvodictorを開発した。Evodictorはある遺伝子を獲得・欠失する際に、前もってどのような遺伝子を持っている・いない傾向があるのかを、数千種以上のゲノム情報をもとに学習し、次にある遺伝子を獲得・欠失しそうな種を予測することができる。Evodictorを用いて3000種程度のバクテリアのゲノム進化を解析し、代謝系全体の遺伝子獲得・欠失が有意に予測可能であること、そしてその背後には生理学的・生態学的に解釈可能な具体的な進化のルールが存在することを発見した。これらの成果を論文として投稿し、”Machine learning enables prediction of metabolic system evolution in bacteria” (Konno and Iwasaki, 2023, Science Advances)として掲載されるに至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一年目は主に、各遺伝子の獲得/欠失の予測を行う機械学習の手法Evodictorを開発し、バクテリアの進化を対象に適用することを目標としていた。昨年度、我々はEvodictorを開発した上でバクテリアのゲノム進化を解析し、その研究を論文として報告できた。さらに解析対象を原核生物全体へと拡大し、2万種を超えるバクテリアの進化における遺伝子獲得/欠失を学習させて約1000種のアーキアの進化における獲得/欠失を予測した。これによりバクテリアの進化をもとにアーキアのどの種が獲得/欠失するのかをどれほど予測できるのかを示すことができただけでなく、異なるドメイン間で共通の進化のパターンを明らかにすることにもつながった。さらに薬剤耐性遺伝子の水平伝播による進化予測にもすでに取り組んでおり、Evodictorの機械学習モデルのパラメータのチューニングによって性能の向上を実現できた。以上より、本研究は概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は遺伝子獲得の予測が可能である薬剤耐性遺伝子を絞り込み、どのような進化パターンがあるのか解析することで、薬剤耐性遺伝子の獲得における普遍的な選択圧や制約を考察する。特に水平伝播によって多剤耐性を獲得する可能性が高い種を絞り込み、どのようなタイプの薬剤には耐性を獲得しにくいと考えられるのか議論する。並行して進化予測の結果のデータベース化を進める。さらに微生物を用いた実験にも取り組み、薬剤耐性遺伝子の獲得しやすさを異なる菌株で比較解析するための微生物実験系を確立する方針である。
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