研究課題/領域番号 |
22KJ1032
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補助金の研究課題番号 |
22J20990 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分45020:進化生物学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
乾 直人 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 陸上進出 / 呼吸器官 / 甲殻類 / 形態進化 / 付属肢 / 節足動物 / 器官形成 / 附属肢 / 等脚目 |
研究開始時の研究の概要 |
ダンゴムシやワラジムシなどの等脚目ワラジムシ亜目の甲殻類は、甲殻類としては特異に陸上で多様化し繁栄した一群である。本群の一部の種が持つ空気呼吸器官は、生息する場所に応じて種ごとに様々な形態を持つことが知られている。本研究ではこの呼吸器官を陸上進出に伴う形質進化のモデルと捉え、空気呼吸器官の獲得メカニズムを解明する。まず発生学実験のモデル種であるワラジムシを用いて空気呼吸器官の形成過程の記載および分子機構の解析を行い、次に他系統の等脚類と相互に比較することで器官の進化過程を考察する。
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研究実績の概要 |
モデル種を用いた研究については、昨年度行った比較RNA-seq解析を完遂し、空気呼吸器官の形成される2対目の腹肢で特異的に発現する候補遺伝子を選抜した。部位のアイデンティティーを決定するHox遺伝子などの発現量から解析の妥当性が確認されたため、現在詳細な発現局在をin situ hybridization法により検討中である。また、今年度よりRNAi法を用いた遺伝子機能の阻害実験を開始した。等脚類については遺伝子機能阻害の先行例がほぼないため、現在のところ実験系の確立を目指して進めている。 さらに、当初の想定にはなかったが、分子実験の過程でワラジムシにおけるホメオティック変異個体を発見した。この変異は自然下で生じたもので、腹部の付属肢が胸部の付属肢へ変形しており、等脚類における付属肢の相同性について示唆を与えるものであったため、観察結果を国際誌へと発表した。 比較研究については、昨年度に続き他種での比較発生学的解析を進めた。沖縄島から採集されたオキナワハヤシワラジムシNagurus okinawaensis、実験所周辺の海岸から採集されたニホンタマワラジムシAlloniscus balssiおよびニホンハマワラジムシArmadilloniscus cf. ellipticusの異なる3種の呼吸器官の形成過程について走査型電子顕微鏡による形態観察および切片作成による組織学的観察を行った。その結果、(1)陸生等脚類の呼吸構造は共通して後胚発生過程で形成されるが、そのタイミングは系統によって異なること、(2)呼吸構造へと変形する部位が呼吸器官のタイプによって異なることが明らかになった。研究2の成果は、今年度日本動物学会山形大会・The third Asiaevo conference にて発表したほか、論文としてまとめ現在査読付き国際誌へ投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定より比較RNAseq解析の完遂が遅れたが、今年度解析を終了し肺形成に関わりうる候補遺伝子を選抜することができた。現在候補遺伝子の解析を行っているが、一部は既に発現局在の観察ができている。また、系統内での形態・発生過程の比較についても今年度完遂し、学会発表・論文投稿を行うことができた。多少の遅れはあるが、当初の想定にないホメオティック個体の観察結果なども得られたため、総合して概ね計画通りに進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
モデル種における分子発生機構の解析を推し進め、特にRNAi法による機能阻害系を確立することで候補遺伝子の中から肺形成の鍵となる遺伝子を特定する。他系統の種においてこの遺伝子の発現動態を調べることで、空気呼吸器官獲得進化の解明を目指す。
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