研究課題/領域番号 |
22KJ1035
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補助金の研究課題番号 |
22J21036 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分44020:発生生物学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
八尾 晃史 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 性分化 / 性スペクトラム / シングルセル解析 / トラギス / 真骨魚類 / 生殖腺 |
研究開始時の研究の概要 |
近年,生物の性をオスとメスの二項対立的かつ生涯不変な現象ではなく,中間型も出現しうる雌雄で連続的,かつ一生の間で変化しうるスペクトラム(性スペクトラム)として捉える動きが高まっている.しかしながら,どのようにして雌雄の中間型が出現するのか,またどのようにして性が変化するのかについては明らかでない.これらの疑問を解決する上で,性転換する魚類が持つ卵巣組織と精巣組織が同居した両性生殖腺という現象が興味深いモデルケースになるのではないかと考えた.本研究では,両性生殖腺形成の分子発生機構の解明を通じて,性スペクトラムを生み出すメカニズムの解明を目指す.
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研究実績の概要 |
近年,生物の性をオスとメスの二項対立的かつ生涯不変な現象ではなく,中間型も出現しうる雌雄で連続的かつ一生の間で変化しうるスペクトラム(性スペクトラム)として捉える動きが高まっている.しかしながら,どのようにして雌雄の中間型が出現するのか,またどのようにして性が変化するのかについては明らかでない.本研究では,性転換する魚類で見られる卵巣組織と精巣組織が同居した「両性生殖腺」という現象を雌雄の中間型のモデルとして用い,メスが両性生殖腺を持つトラギスを材料として両性生殖腺形成機構の解明を目指している.今年度は,前年度末に先進ゲノム支援の支援を受けて実施した,メス両性生殖腺と性転換後のオス精巣のシングルセルRNA-seqデータの解析を主に実施した.まず解析のためのリファレンストランスクリプトームデータを整備した.いくつかの手法を検討した結果,superTranscriptsという手法で冗長な配列を除去したデータセットが良い成績を示したため,これをリファレンス配列として用いて解析を行なった.その結果,メス両性生殖腺には通常の魚類のメスの卵巣では見られない,アンドロゲン(男性ホルモン)を産生する少数の細胞集団の存在することを発見した.魚類において,アンドロゲンは生殖腺のオス化を促すことが知られていることから,これらのアンドロゲン産生細胞がアンドロゲンを分泌して生殖腺の部分的なオス化を促すことが両性生殖腺形成に寄与しているという仮説が考えられ,シングルセル解析によって研究が大きく進展した.この仮説を検証するために,性ホルモンの測定や投与実験,細胞の空間的な分布パターンの解析を進めている.加えて両性生殖腺において,オス化を促す主要な転写因子であるdmrt1の異所的な発現も認められ,こちらについても解析を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度に先進ゲノム支援の支援を受けて実施したシングルセルRNA-seqにより,申請当初は予定していなかった一細胞レベルでの遺伝子発現情報を得ることができ,かつそのデータの解析に成功したため.また初年度に実施した研究成果を,査読付き国際誌に2報の論文として発表することができたため.
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今後の研究の推進方策 |
シングルセル解析のデータをin situ hyberidizationや免疫染色によって検証するとともに,空間的な細胞の分布や遺伝子発現パターンを明らかにする.加えて,阻害剤の投与実験や性ホルモンの分泌パターンの測定を行うことで,アンドロゲンが両性生殖腺形成に寄与するという仮説を検証する.また,メスの両性生殖腺については細胞外RNAのコンタミネーションによりシングルセルRNA-seqデータのクオリティが低かったため,細胞を解離する条件を再検討して再度シーケンスを行う予定である.
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