研究課題/領域番号 |
22KJ1046
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補助金の研究課題番号 |
22J21180 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分38040:生物有機化学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
川合 誠司 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 放線菌 / 生合成 / ジアゾ基 / 非リボソームペプチド / ポリケタイド / X線結晶構造解析 / クライオ電子顕微鏡 / 天然物 / 非リボソームペプチド合成酵素 / ポリケタイド合成酵素 / 二次代謝 |
研究開始時の研究の概要 |
リジンの5位水酸化を触媒するAzpKの結晶のさらなる分解能向上のためにスクリーニングを継続する。5-オキソリジンのジアゾ化を触媒する膜タンパク質であるAzpLについて精製度の向上に取り組み、X線結晶構造解析を行うことで詳細な反応機構を明らかにする。 Streptomyces sp. RI-77株が有するジアゾ化反応に必要な遺伝子を含む未知の生合成遺伝子クラスターについてゲノムマイニングを行ったところ、本クラスターの遺伝子産物がアベナルミ酸を生産することが分かり、全生合成経路を解明した。今後は、ATP依存的なジアゾ化を触媒するAvaA6やホモログ酵素の構造解析を進めていく。
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研究実績の概要 |
希少放線菌Kutzneria albidaが有する機能未知のクラスター(cmaクラスター)に着目し、ゲノムマイニングを実施した。異種放線菌を用いてcmaクラスター全長の異種発現実験を行ったところ、cmaクラスターはp-クマル酸の生産を担っていることが判明した。上記のp-クマル酸の生合成経路中でジアゾ化反応を触媒するCmaA6について、X線結晶構造解析とクライオ電子顕微鏡法による解析から、構造モデルを取得した。さらに、CmaA6の反応機構を解明するために、部位特異的変異導入実験と、詳細な反応速度論解析を実施した。その結果、ANLスーパーファミリーの酵素としては前例のない、3基質/3生成物による逐次反応によって、ジアゾ化が触媒されることが判明し、妥当な反応機構の推定に成功した。 放線菌Streptomyces albospinusが生産するヒドラジド基含有アリールポリエン、スピナマイシンの生合成研究を実施した。推定生合成遺伝子クラスター(spiクラスター)の遺伝子破壊実験と、組換え酵素のin vitro解析から、ジアゾ化を介してヒドラジド基を生合成することを明らかにした。 ジアゾ基含有トリペプチド、アラゾペプチンの生合成遺伝子クラスターについての比較解析の結果、生合成の初発反応である5-hydroxylysineの合成を担う新奇ファミリーの酵素AzpKをコードしない株を3株発見した。これらの株は、α-ケトグルタル酸依存型ジオキシゲナーゼ (α-KGD)を有していた。3つのα-KGDのうち1つをAzpK2と、もう1つをPp_AzpK2と命名し、それぞれの組換え酵素の機能解析を行った。その結果、AzpK2は(2S,5S)-5-hydroxylysineをPp_AzpK2は(2S,5R)-5-hydroxylysineをL-Lysから絶対立体選択的に合成することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該年度、cmaクラスターの機能解析についての成果について、筆頭著者の査読付き国際誌で報告を行った。この経路から見出されたCmaA6について、一昨年度得られた結晶構造と比較して、昨年度行ったスクリーニングの結果、分解能が十分に向上し、科学的な議論ができるようになった。特に、apo体だけでなく、AMP複合体構造を解明することができたため、基質の結合方法への示唆が得られたとともに、apo体の構造ではdisorderしていたC末端領域の全域の電子密度の観測に成功し、構造情報のクオリティが飛躍的に向上した。また、多数の速度論解析と部位特異的変異導入実験から、最終年度までの解明を目指していた、反応機構の解明にまで至った。本成果に関して、現在、論文の投稿準備中である。 スピナマイシンの生合成研究からは、その生合成経路の全容の解明に成功し、ヒドラジド合成のために、中間体としてジアゾ化合物が形成されるという知見の獲得に成功した。放線菌の二次代謝における、ジアゾ基の新たな役割が判明した点は重要であり、当該年度、筆頭著者の査読付き国際誌で報告を行った。 5-hydroxylysineは、医薬品の開発・生産の面で有用な化合物であり、その生産系の構築は研究開始当初からの大きな目標であった。昨年度までの研究から、(2S,5S)-5-hydroxylysineと(2S,5R)-5-hydroxylysineを絶対立体選択的に合成する酵素をそれぞれ発見できたことは、期待を大きく上回る成果であったといえる。さらに、ゲノムデータベース上に存在する多数のホモログ酵素についての解析も行い、活性の強いホモログ酵素の選抜にも成功した。当該年度において、本成果に関する技術の特許出願を、国内企業とともに行った。現在、論文の投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
元々のアラゾペプチン生産菌が保有する、新奇ファミリーの5-hydroxylysine合成を担う酵素である、AzpKの反応機構解明を目指す。これまでに得られた結晶構造の更なる分解能の向上と、基質複合体構造の取得を行う。また、放線菌の細胞抽出物を入れた系でのin vitro解析を実施し、AzpKの活性が検出できる条件を検討する。 スピナマイシンの生合成経路において、ジアゾ基をヒドラジンに還元すると期待される酵素SpiCの機能のin vitro解析による同定を目指す。そのために、ジアゾ中間体を基質として、各種条件におけるSpiCのin vitro解析を実施する。また、SpiCのX線結晶構造解析にも取り組み、その詳細な触媒メカニズムに関する知見を得る。 ゲノムデータベース上には、ジアゾ基合成に関与すると想定される遺伝子セットを有する未知の生合成遺伝子クラスターが多数存在する。このような遺伝子に対して、これまでに実施したゲノムマイニング(6種類)に加えて、新たに5種類程度のクラスターの解析を行う。これにより、ジアゾ基などのN-N結合を有する新たな天然物を発見する。さらに、新規天然物が発見された際には、その生合成経路も明らかにし、新しい機能を有する生合成酵素の同定を目指す。 本年度は、昨年度までの研究成果に関して、順次、論文執筆と投稿を進める。筆頭著者として査読付き国際誌で4報の掲載を予定している。
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