研究課題/領域番号 |
22KJ1050
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補助金の研究課題番号 |
22J21260 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
和田 淳太郎 (2023) 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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特別研究員 |
和田 淳太郎 (2022) 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | レプトジェネシス / muon g-2 anomaly |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、宇宙の物質と反物質の非対称性を説明可能な理論の一つであるレプトジェジェシスと、ミューオンの異常磁気能率のアノマリー(muon g-2 anomaly)を統一的に理解、説明可能なシナリオを議論、構築する。muon g-2 anomaly は近年否定的な方向からの研究結果も散見されるものの、その原因については未だ議論の余地がある。本研究ではこれを標準模型を超えた物理(BSM)と仮定した場合に、レプトジェネシスのシナリオにどのような示唆があるか議論する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、宇宙の物質反物質の非対称性を説明する機構の一つであるレプトジェネシスと、新物理の兆候の可能性が議論されている muon g-2 anomaly の統一的な説明である。本年度は主にU(1)Lμ-Lτ ゲージ対称性を持つ模型で、muon g-2 anomaly とレプトジェネシスを両立させるシナリオに関する研究を行った。仮想上の対称性である、このゲージ対称性は、現在の宇宙では破れていなければならないが、もしそのスケールが電弱対称性の破れのスケールよりも小さいか同等であれば、muon g-2 anomaly を説明することが可能である。しかし、その場合、初期宇宙でU(1)Lμ-Lτ ゲージ対称性が回復してしまい、レプトジェネシスに必要なCP位相がでないことが知られていた。また、muon g-2 anomalyから示唆される新物理のスケール(電弱対称性の破れのスケール程度)と、通常レプトジェネシスが成功する新物理のスケールに大きな隔たりがあることも課題の一つであった。研究では、新しく大域的 U(1)B-L を破る場を導入し、それが初期宇宙で動的なCP位相を生み出せば、muon g-2 anomaly の説明と、レプトジェネシスが両立できることを示した。動的な位相を生み出す起源としては、Affeck Dine mechanism と同様にU(1)B-L を破る高次元演算子を導入し、初期宇宙でU(1)B-L を破る場が大きな配位を仮定した。具体的な計算によって、このセットアップでレプトジェネシスが成功するパラメーターを解析し、同時に、副次的に現れるマヨロン場の振動がダークマターの起源にもなり得ることを示した。以上の結果を論文にまとめ arXiv へ投稿した。(hep-ph 2404.10283)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在までに、完了した研究内容は(i) U(1)Lμ-Lτ ゲージ対称性を持つ模型によるレプトジェネシスとmuon g-2 anomalyの統一的な説明が可能なモデルの提唱 (ii) Affleck Dine レプトジェネシスのmuon g-2 anomalyの観点からのrivisit であり、研究計画に記載した内容の主な部分が概ね完了したと言える。(i) については、上記の研究実績の概要にも記載したように、新しく大域的 U(1)B-L を破る場を導入し、それが初期宇宙で動的なCP位相を生み出すことで、レプトジェネシスとmuon g-2 anomaly の統一的な説明が可能な模型を作成し、具体的な解析によって、レプトジェネシスが上手くいくパラメーター領域を明らかにした。副次的な予言として、マヨロン場の振動がダークマターの起源にもなり得ることを示した。(ii) については、昨年度主に行った研究である。超対称性模型において、slepton 場が十分軽いと仮定すると(宇宙初期に)非自明な真空が発生しAffleck Dine レプトジェネシスが上手く機能しなくなる恐れがあることが先行研究において指摘されていた。研究ではmuon g-2 を説明するためにslpton 場が軽いと仮定すると、全く同様の問題が起こることを示し、それを回避可能なパラメーター空間を解析的に割り出した。(i) の研究についてはarXiv へ投稿しており、(ii)の研究ではすでに査読済みでジャーナルに掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
研究開始当初、新物理の兆候とされたmuon g-2 anomaly はその後の発展により二つの異なる理論計算(data-diriven 法、Lattice による計算)の両者が異なる値を報告したため、混迷を極めている。例えば、Lattice による計算が正しかった場合、実験と理論計算は無矛盾で新物理の可能性は否定される。その結果、muon g-2 anomaly そのものに懐疑的な研究者も多い。今後の推進方策としては、muon g-2 anomaly のみにとらわれずに、より広い文脈を想定し、その示唆の一つとしてmuon g-2 anomaly を置いた研究に切り替える方針である。実際、本年度で行ったU(1)Lμ-Lτ ゲージ対称性を持つ模型のレプトジェネシスに関する研究では、U(1)Lμ-Lτ ゲージ対称性の数ある動機の一つとしてmuon g-2 anomalyを掲げmuon g-2 anomaly以外にもHubble tension や Dark sector の文脈などより広い文脈で有効な模型であることを強調した。今後 muon g-2 anomaly を説明可能な模型は他にも存在するため、それとレプトジェネシスとの融合を目指す研究は推進する予定だが、あくまでmuon g-2 anomalyはメインではなく、動機の一つとしてあげておくにとどめる方針である。
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