研究課題/領域番号 |
22KJ1052
|
補助金の研究課題番号 |
22J21306 (2022)
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分90110:生体医工学関連
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
杉野 正和 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
|
キーワード | 脳活動計測 / 力学モデル / 視覚刺激 / 脳磁図 / 視覚情報処理 / 磁気共鳴画像 / 図形認知 / 学習障害 |
研究開始時の研究の概要 |
読み書きや図形認識を苦手とする学習障害は,脳での視覚情報処理が円滑に行われないことに起因すると考えられる。しかし,図形認知のメカニズムは未解明の部分が多く,体系的な理解や支援方法の確立は行われていない。本研究では,MRIや脳磁図を利用して脳活動を高精度に推定することで,視覚野の構造的な違いが図形認知に与える影響を明らかにする。さらに,神経集団を模したシミュレーションモデルを作成し構造的な個人差を反映することで,文字や図形の認識に関する障害のメカニズムの解明と学習支援方法の確立を目指す。
|
研究実績の概要 |
本年度は視覚刺激の脳活動応答の非線形性についての解析と脳神経細胞集団の力学モデルの構築に取り組んだ.これは本研究課題における視覚情報処理のモデル化において,神経細胞集団を模したモデルに要求される,数理的な時間的性質を検討することを目的としている.視覚刺激には自己相関が極めて低いM系列信号を輝度値に変換した明滅光パターンを使用し,その際の脳活動応答の計測には高い時間分解能を持つ脳磁図を使用した.脳磁図で計測したセンサ値に対して,Minimum norm estimationによる皮質表面の電流源分布の推定および,刺激と応答の相関を算出し,回帰モデルを用いて評価を行った.これらは,モデルに対して同様にM系列信号の刺激を入力した際の応答の時間遅れや非線形性について満たすべき性質である.脳の力学モデルについては,非線形性や時間遅れの性質を持ちながら,数理的な解析手法の適用性が高く,高速なシミュレーションが可能な,低次元の発火率モデルの構築に取り組んだ.既存のモデルと比較して,神経細胞膜電位やシナプス結合の生理学的な特性をより細かく反映したことで,実際の脳活動との比較により適したモデルを構築することができた.モデルの性質を決定する生物学的なパラメータに,先行研究で報告されている哺乳類の視覚野におけるパラメータを適用したところ,脳活動において計測される範囲での周波数の発生や,外部刺激の変化による周波数の発生や減衰が観察された.構築したモデルにおいて,脳磁図で計測した視覚刺激応答を再現することが今後の課題である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画のうち計測について,本年度は磁気共鳴画像および脳磁図による図形認識時の脳活動領域の推定を計画していたが,活動のダイナミクスの評価には時間的な解像度がより重要であると位置づけ,脳磁図による視覚刺激応答の計測と活動領域の推定に取り組んだ.視覚刺激応答について個人に依存する性質と依存しない性質を切り分けるために必要な被験者数を確保することができた.空間的な解像度の高い磁気共鳴画像による計測は,計測施設の変更に伴い準備に時間を要することが予想されるが,次年度の早い段階で取り組むことを目指している.モデル化について,本年度と次年度でモデルの構築と学習および,結合状態による学習性能の比較を目標としていた.モデル構築での結合状態を表す指標を追加する過程において,数学的に満たす十分条件に関する評価と議論に時間を要したため,モデルの構築と性質の評価までが本年度中に達成されており,学習機構の組み込みと学習性能の比較については次年度取り組む事となった.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度計測した,視覚刺激として明滅光パターンを提示した際の脳活動応答と,数理的に構築した発火率モデルをもとに,視覚情報処理のモデル化に取り組む.被験者間での視覚情報処理能力の差が,脳の構造や活動にどのように関連するかを,モデルを通して検討することが目的であるため,まずは脳磁図で計測した視覚刺激応答を再現することから始めていく.その後,被験者間の差をモデルに反映させた際のダイナミクスの違いを確認する.視覚刺激を模した異なる種類の刺激を提示した際の応答の違いを分類器に入力することで,学習速度および識別精度の比較を行う.さらに,モデルへの入力次元を拡張し,空間的な情報入力を可能とすることで,画像の入力を可能とし識別性能の比較を行うことで,画像の持つ特徴が識別性能に与える影響をひょうかし,認識や可読性についての定量的な評価を目指す.モデルの入力次元の拡張においては,先行研究を参考にするとともに,磁気共鳴画像による計測を行い,視覚情報のもつ空間的な性質をヒトの脳においてどのように処理されているかを確認する.
|