研究課題/領域番号 |
22KJ1070
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補助金の研究課題番号 |
22J21529 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分16010:天文学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森井 嘉穂 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 星形成 / 大質量星形成 / 赤外線暗黒星雲 / 分子雲コア |
研究開始時の研究の概要 |
太陽の8倍以上の質量をもつ星、大質量星が、大質量なガス塊(分子雲コア)から形成されるのか、初期には小質量な分子雲コア が周囲から質量を獲得し大質量星を形成するのかは未だ論争中であり、星形成や銀河進化を理解する上で重要な課題の一つである。本研究は、 電波干渉計ALMA(Atacama Large Millimeter/submillimeter Array)を用いた高空間分解能観測により、赤外線暗黒星雲に形成される分子雲コアの形成過程や質量分布、重力不安定性やガスの運動を調べることで、大質量星形成初期段階を特徴づけることを目的としている。
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研究実績の概要 |
本研究は、大質量星形成の初期段階にあるガス塊(分子雲コア)の性質を明らかにすることで大質量星の形成過程の解明を試みている。 今年度は、昨年度までにアルマ望遠鏡を用いた電波観測データから同定した分子雲コアサンプルを用いて、コアの質量やコア間距離を母体ガス雲の物理量から予想される値と比較して分裂過程を調べ、投稿論文としてまとめた。観測されたコアの形成過程は母体ガス雲の重力不安定によって分裂した場合と同程度の物理量であることが本解析によって明らかになった。クランプ内に複数のコアを取り囲むサブクランプ構造を発見したが、クランプからサブクランプ、サブクランプからコアという2段階の分裂は顕著には見られず、コアの質量・間隔はクランプの物理量とより強い相関をもっていた。 本研究では、先行研究よりも高分解能・高感度な観測を行ったことで、より多くの分子雲コアサンプルに基づいたコアの形成過程の調査が可能になった。本研究成果はすでに査読論文としてAstrophysical Journalに受理され出版された。
さらに、分子輝線データを用いてコア周囲でのガスの運動を調べる研究も開始した。これまでの研究から、大質量星形成段階初期に形成されるコアは、自身で大質量星を形成できるほどには大質量ではなく、周囲からの効率的なガスの獲得が必要であることを示唆する結果を得てきた。より直接的に質量獲得過程を調べるため、より低密度なガスの輝線データの解析を数領域分行った。コアへのガス流入の兆候を見つけ、その流入率がコア質量と相関する可能性が示唆された。今後調査領域を増やし、より精度を高めたガス流入率の調査を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分裂過程の調査に加え、ガスの運動を調べる研究のためのデータ処理を行い、数領域の解析を実行しガス流入を示唆する結果を得たなど、おおむね計画通りに研究を遂行した。また、昨年度から執筆に取り組んでいた分裂過程に関する査読論文を出版し、順調に進んでいると考える。 しかし、コアの質量分布に関しては、コアの同定方法への依存性などを調べた結果さらなる議論が必要だと考え、計画よりは遅れて進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、コア周囲のガスの運動について統計的調査を行い、これまでの結果をまとめ大質量星形成モデルへの示唆を与えることを目標としている。
これまでに数領域で行ったガス流入の解析を、多数の領域に対して適用し、コア成長が実現されるほどに効率的なガス流入が存在するのか、質量流入率とコア質量に相関がみられるのか、という点を多くのサンプルを用いて議論する。コアを同定した39領域のうち、3領域分は高空間分解能データが取得されているが、その他は現在観測実行中であるため、観測終了後データ処理を行い、複数領域でのガス流入の兆候の調査を行う。 解析には二つの独立した手法を用いる。一つは、視線方向にガスが落ち込む際に期待される輝線の形状をコア付近で探し、モデルフィッティングによって流入率を見積もるというもの。もう一つはより大きなスケールでガスの速度勾配から流入過程を調べるというものである。ガスの質量と速度勾配の情報から流入率を見積もる。 複数の星からなる星団を形成するようなクランプ内のガスの運動は複雑で、単純化したモデルでは説明できないことも予想されるが、2種の解析を行うことで、各コア周囲のガスの構造、及び複数のコアを取り囲む比較的大きな空間スケールのガスの構造を調べ、クランプ内の3次元的なガスの運動の理解につなげたいと考えている。また、流入率を調べることにより、コア成長による大質量星形成モデルを検証することができ、大質量星形成シナリオへの示唆が得られると期待される。
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