研究課題/領域番号 |
22KJ1097
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補助金の研究課題番号 |
22J22012 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分09020:教育社会学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大國 七歩 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2024年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2023年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2022年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | 異文化間教育学 / 在日ネパール人1.5世代 / ニューカマーの子ども / 学校文化 / 移民背景を持つ高校生 / 定時制高校 |
研究開始時の研究の概要 |
日本に暮らすネパール人の子どもが、日本の学校に特有な文化を経験する中でどのような将来を構想・希望するのか、及びその将来像がどのように実現もしくは変容していくのかというプロセスを明らかにすることで、日本社会がニューカマーの若者にもたらす影響を考察する。 方法としては、ネパール人の子ども・若者を対象に6年間にわたる追跡インタビューを実施するほか、日本国内の全日制高校と定時制高校、インターナショナルスクール、NPOの無料学習支援教室などと、ネパール国内の学校におけるフィールドワークを行うことによって、彼ら/彼女らが受ける教育経験の相違点とその影響を分析する。
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研究実績の概要 |
2023年度は、調査を継続するとともに、2回の学会発表を行った。 9月に弘前大学で開催された日本教育社会学会大会では、定時制高校に通う移民背景を持つ高校生に対する理解・評価について、多数の多様性の一つとして移民を捉えていると考えられる専任教員と、日本語教育学等の学問的素地や移民背景を持つ生徒にに特化した支援経験があり、彼ら・彼女らのみが対象となる授業を主に担当している講師の語りを比較した。どの教員も多様性の尊重という意識はあるものの、具体的な生徒理解に関しては専任教員は日本語関連講師に劣ることが明らかになり、現在の教員養成・研修や教授経験からでは涵養されないまなざしの存在が指摘できた。 11月には、初めての国際学会参加となったシンガポールでのERAS-WERA大会で口頭発表を行った。日本語授業および地歴公民科「日本語取り出し」授業に関連する専任教師と日本語関連講師の見方の差異が両者の葛藤状況を産んでいることを発表した。オーディエンスから多くの質問を受けて多様な視点を持つ研究者と議論することができた。また、この発表準備は、英語での要旨の書き方や発表の組み立て方について学ぶ貴重な機会となった。 3月には、ネパールでのフィールド調査を実施した。カトマンズ、ガルコット、ポカラの三地域を訪れて都市と農村部の現地学校の様子を観察したほか、日本に滞在経験がある生徒や、子どもが日本で働いているため孫の世話をしている高齢者へのインタビューを行った。滞日しているネパール人だけではなく、ネパール現地に暮らすネパール人の視点から日本に移民することの意味を理解することができ、今後の研究に大いに役立つと考えられる。また、日本国内のネパール人コミュニティへのコネクションも得られた。 加えて、下半期には日本国内に暮らすネパール人の若者を対象とした、生活経験と将来展望に関する追跡インタビューの第3期を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
難解な文章の読み書きが困難になった等の度重なる体調不良のため、特に論文執筆・投稿の点で当初の予定から大幅に進捗が遅れている。一方で、可能な限り研究活動を行おうと努力し、2度の学会発表と国内およびネパールでのフィールド調査、追跡インタビューの第3期を行った。特に、ネパールでのフィールド調査は、学振申請時から計画していたものを、コロナ禍と現地での夏季のマラリア等感染症の蔓延により半年遅らせながらも実現することができた。
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今後の研究の推進方策 |
既に申請した通り、令和6年度は疾病のため休学し、令和7年度に学振特別研究員としての研究活動を再開する予定である。 既に多くのデータを収集しているため、令和7年度は研究発表が主となる。まず、移民背景を持つ生徒に対する教師のまなざし・評価の形成【C】および、在日ネパール人の中高生が抱くライフコース展望【A-1】を分析し、論文を投稿する。また、申請者が採択以前および令和4年度から継続している定時制高校とNPOでの調査に加え、インターナショナルスクールと全日制高校での参与観察を再開し、学校タイプ間の比較によるネパール人生徒が経験する学校文化の分析【B-1】を行う。加えて、ネパール人の大学生と協働する、若者参加型アクションリサーチ(Youth Participatory Action Research: YPAR)を実施できるよう検討する。 また、令和5年度のネパール現地調査から、「移民の選抜性」概念を用い、来日するネパール人としないネパール人との、社会・経済的背景、学校経験、および価値観などの相違点の有無や内容を調査・検討する【B-3】。 【A-1】【B-1】【C】を踏まえて、他のエスニシティと比較した在日ネパール人1.5世の特徴をまとめて発表する【B-2】。また、夏にIV期追跡インタビューを開始する。4年半分のデータとそれまでの研究を統合してライフコース形成と社会適応を分析し、移民と日本社会・日本の学校との関係を包括的に説明する理論の形成を目的として、博士論文を執筆する。ここで生成したモデルを投稿論文にまとめる【A-2】。
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