研究課題/領域番号 |
22KJ1099
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補助金の研究課題番号 |
22J22026 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分54030:感染症内科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田村 あずみ 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | バクテリオファージ / 合成 / 細菌感染症 / 大腸菌O157 / 食中毒 / 検出 / O157:H7 |
研究開始時の研究の概要 |
抗菌薬が効かなくなる「薬剤耐性菌」の出現と蔓延が世界的な医療問題となっている。薬剤耐性菌による感染症に対して、細菌に感染するウイルスであるバクテリオファージ(ファージ)を利用した治療法が有効であると期待されている。しかし、嫌気性細菌に感染するファージを分離・培養することは困難であるため、近年薬剤耐性化が問題となる嫌気性腸内細菌を対象にした研究が不十分である。そこで、本研究ではメタゲノム情報と合成生物学を統合することにより、ファージの分離培養に依存せずにゲノム情報から目的の腸内細菌に感染するファージをデザインすることを可能とする、ファージ療法の基盤技術確立を目指す。
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研究実績の概要 |
バクテリオファージ(ファージ)とは細菌に特異的に感染するウイルスである。薬剤耐性菌の出現と蔓延に伴い、ファージを利用した細菌感染症(ファージ療法)が期待されており、世界的に研究開発や治療が進められている。また、ファージの溶菌効果向上や遺伝子機能解析の目的で、合成ファージが着目されている。しかし、ファージの合成技術は確立しておらず、比較的汎用性の高い方法であっても扱えるファージのゲノムサイズに制限があった(約50 kb以下)。そこで、簡便かつゲノムサイズの大きいファージにも適用可能なファージ合成系の確立に取り組んだ。 安価かつ時間・手間のかからないファージ合成方法としてギブソン・アセンブリによるin vitro合成系を利用し、DNA断片の精製方法やアセンブリ方法について条件検討を行うことで、大腸菌T7ファージ(約40 kb)の合成効率を10^4倍向上させた。また、ゲノムサイズが約90 kbある新規大腸菌ファージの遺伝子改変も成功した。 この技術を応用して、腸管出血性大腸菌O157に感染するファージ(約70 kb)に検出タグを搭載し、大腸菌O157の検出を行った。20種類の合成ファージを用いた比較実験では、尾部繊維や溶菌酵素のC末端側にタグを付加したファージで検出感度が高くなることが示された。さらに、合成したファージは、異なる遺伝的クレードに属する大腸菌O157臨床分離株53株全てを検出することができ、非O157志賀毒素産生大腸菌の臨床分離株35株と明確に区別することができた。このファージが大腸菌O157に対して高い特異性を持つことが確認され、O157抗原を受容体として使用していることも実験的に示された(Tamura A et al., Communications Biology, in press)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ファージの合成効率を向上させ、ゲノムサイズが約90 kbある新規大腸菌ファージの遺伝子改変に成功した。また、ファージ合成技術の応用として、腸管出血性大腸菌O157に感染するファージに検出タグを搭載し、感度および特異性の高い大腸菌O157の検出系を開発した。さらに、一部の大腸菌O157臨床分離株に対してファージ感染効率・検出感度がやや低かったことから、細菌の獲得免疫機構(ファージ防御システム)の関与を予測し、実験的に確認した。現在、大腸菌O157由来のファージ防御システムについて、防御メカニズム等の研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後もファージ合成技術を利用し、大腸菌O157に関連した研究を進めていく。大腸菌O157のファージ防御システムに対抗できるO157ファージの創出を目的とし、ファージ防御システムの抑制因子の探索およびエスケープ変異ファージの取得を進める。これらが奏功した際には、大腸菌O157臨床分離株の検出を再度行い、検出感度が向上したかを検証する。
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