研究課題/領域番号 |
22KJ1104
|
補助金の研究課題番号 |
22J22105 (2022)
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分28020:ナノ構造物理関連
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
木下 圭 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2024年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2023年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2022年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
|
キーワード | 共鳴トンネル / 負性微分抵抗 / ツイスト / バンド構造 / TEM / 遷移金属ダイカルコゲナイド / 量子井戸 / サブバンド / ファンデルワールスヘテロ構造 |
研究開始時の研究の概要 |
WSe2、MoS2を始めとする遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)は、原子が二次元的に配列して単層を作り、それらが弱いファンデルワールス(vdW)力によって積層する二次元層状物質として知られている。TMDは複数層になると、膜厚方向に量子閉じ込め効果が働き、量子井戸のように離散的なエネルギーバンド(サブバンド)を形成する。そこで本研究では、複数層TMDを用いたvdWヘテロ構造による量子井戸技術を構築し、電子デバイス・光デバイスの実現を目指している。
|
研究実績の概要 |
本研究では、二次元層状半導体WSe2と二次元層状絶縁体h-BNを組み合わせたWSe2/h-BN/WSe2ファンデルワールス(vdW)トンネル接合素子を作製し、共鳴トンネル電流の検出とその電子・光デバイス応用へ向けた機能開拓を行っている。今年度は、本素子の「①高いピーク・バレー電流比(PVR)を利用可能な負性微分抵抗(NDR)デバイスとしての側面」と、「②エネルギーバンドをプローブする手法としての側面」に着目し、これらの側面をより発展させた研究を行った。 まず①に関して、本研究では1層から4層のWSe2を用いてWSe2/h-BN/WSe2トンネル接合を作製し、層数の異なる場合のトンネル測定の結果を比較した。すると、WSe2のバンド構造の層数依存性に伴い、K点・Γ点の波数のホールを用いたトンネルの選択的検出が可能であることが分かった。このうちソース側:3層WSe2とドレイン側:1層WSe2の組み合わせにおいて、Γ点の波数が保存された共鳴トンネルが生じ、PVR: 64の電流ピークを観測できた。この値は従来のvdWヘテロ構造による共鳴トンネル素子のトップデータを3倍近く更新する値だった。 続いて②に関して、1層WSe2をあらゆるツイスト角度下で積層したツイスト2層WSe2(tBL-WSe2)をドレイン側に配置してトンネル電流を測定し、バンド構造のツイスト角度依存性を調査した。すると、ツイスト角度が0~4度では価電子帯Γ点バンドのエネルギーが100 mV程度変調され、6度以上ではほぼ変化しないことが分かった。また、tBL-WSe2に対して透過電子顕微鏡(TEM)観察を行った結果、tBL-WSe2の原子再配置がツイスト角度4度まで観測できることが分かった。これらの結果から、原子再配置が価電子帯Γ点バンドの変調に関与していることを突き止めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、WSe2を用いた共鳴トンネル素子を用い、異なる2つの顕著な成果を得ることができた。1つは負性微分抵抗デバイスとしての性能の高さを示すものであり、もうひとつはツイスト角度を設計パラメータとすることでバンドのエネルギー変調が可能であることを示すものである。これらの成果は今後のデバイス応用を見据えた素子設計の指針を立てる上で非常に有用であり、1年間にあげた成果量としては期待以上であった。
|
今後の研究の推進方策 |
上記の2つの成果をどちらも論文として発表する。さらに、今後の電子・光デバイス応用に向けて、より複雑なWSe2/h-BN/WSe2/h-BN/WSe2二重トンネルバリア構造の実現と動作確認を行う予定である。
|