研究課題/領域番号 |
22KJ1109
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補助金の研究課題番号 |
22J22246 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分43040:生物物理学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
辻村 真樹 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 光受容タンパク質 / 光吸収波長 / プロトン移動 / QM/MM法 / 分子動力学シミュレーション / 吸収波長 / イオン輸送 / 量子化学計算 |
研究開始時の研究の概要 |
光受容タンパク質はタンパク質環境を利用して、色素分子の吸収波長を環境や目的に合わせて最適化すると同時に、分子機能を獲得する。本研究はロドプシンや光化学系IIタンパク質などの光受容タンパク質を研究対象とし、光受容タンパク質において最適な吸収波長と分子機能が、同一のタンパク質環境で実現するメカニズムを明らかにする。これにより、理想的な吸収波長と分子機能を同時に示す人工タンパク質の創出に寄与することができると考えられる。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、光受容タンパク質において最適な吸収波長と分子機能が同一のタンパク質環境で実現する機構を、分子構造の観点から明らかにすることである。2023年度は光受容タンパク質の分子機能に特に着目し、QM/MM法と分子動力学法を用いた解析により以下の2つについて明らかにし、論文を発表した。 1. アミノ酸残基のpKaと分子振動数の相関の解明 タンパク質において測定しやすい量とアミノ酸残基のpKaの相関が明らかになれば、その測定量からpKaの情報を得ることで、分子機能の発現に重要なプロトン移動機構を明らかにする手がかりになる。本研究では分子振動数に注目し、水素結合のドナーのO-D伸縮振動数およびプロトン化したカルボン酸のC=O伸縮振動数と、水素結合のドナー・アクセプター間のpKa差の相関を明らかにした。この相関を用い、分子振動数からpKaを見積もることで、タンパク質中のプロトン移動機構が解析できることを示した [Tsujimura, et al. Biophys. J. 122 (2023)]。 2. ヘリオロドプシンにおける酢酸イオンの結合機構の解明 機能未解明の微生物ロドプシンであるヘリオロドプシンにおいて、酸性条件では、色素であるレチナールの近傍に酢酸イオンが結合することが報告されている。本研究では、酸性条件で結合する酢酸イオンのプロトン化状態を明らかにするとともに、低いpHで酢酸イオンを結合し、高いpHで放出する機構を解析し、機能解明の手がかりを得た [Chiba, Tsujimura, et al. Biochemistry 62 (2023)]。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プロトン移動反応に重要なアミノ酸残基のpKaと分子振動数についての、普遍的な相関を明らかにすることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き光受容タンパク質の「吸収波長」と「分子機能」をキーワードに研究を推進する。特に分子機能の発現に重要なプロトン移動反応について、以下の研究課題に取り組み、2024年度中に論文を発表することを目指す。 1. 水素結合のpKaとあらゆる物理量の相関 [O-H...O] 型の水素結合について、水素結合のドナー・アクセプター間のpKa差と、様々な物理量 (結合距離・分子振動数・NMRケミカルシフト・水素結合のエネルギーなど) の相関を調べ、その相関の理論的背景を明らかにすることを目指している。タンパク質環境がこれらの量にどのように寄与するかも解析している。タンパク質環境中の水素結合における、pKaとあらゆる物理量の相関が明らかにされることで、タンパク質内アミノ酸残基のpKaを求める手立てが増え、プロトン移動機構の解明が進むことが期待される。 2. プロトン移動が起こるための分子基盤の解明 似たようなアミノ酸配列・タンパク質構造を持つにもかかわらず、プロトン移動反応が起こるタンパク質と起こらないタンパク質について、タンパク質のプロトン化状態や水素結合のエナジェティクスを比較している。プロトン移動反応が起こるために必須の構造的要因を明らかにし、変異導入実験でプロトン移動反応を自在にコントロールすることで、その分子基盤を実証するのが最終的な目標である。
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