研究課題/領域番号 |
22KJ1144
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補助金の研究課題番号 |
22J22921 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分27040:バイオ機能応用およびバイオプロセス工学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山脇 つくし 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 化膿レンサ球菌 / 糖 / 抗体 / 低分子化合物 / 物理化学 |
研究開始時の研究の概要 |
化膿レンサ球菌(GAS)は、咽頭炎などの軽度の感染症から、連鎖球菌性毒素性ショック症候群などの重篤な感染症を引き起こす。GAS が引き起こす感染症に対しては、抗生物質を用いる治療が主流であるが、薬剤耐性菌の出現が報告されているため、他の戦略を構築する必要がある。近年、薬剤耐性菌の出現を抑えるため、病原因子を標的とする手法が試みられている。本研究では、2つの蛋白質を標的として抗体と低分子阻害剤を取得し、機能阻害様式や抗菌活性を解析する。これらの解析を通して、各分子モダリティによる制御様式の違いと抗菌活性の相関を明らかにし、 GASに対する機能阻害分子の設計指針を提案することを目指す。
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研究実績の概要 |
化膿レンサ球菌の表層タンパク質の機能を制御する新たな機能阻害分子を開発するため、病原性を引き起こす上で必要不可欠とされている炭水化物の代謝に関わるタンパク質に着目している。1つ目の標的であるマルトデキストリン結合タンパク質SPs0871について、SPs0871特異的に結合しマルトデキストリン獲得を阻害する低分子化合物の探索を行った。前年度までにスクリーニングを経て、リガンド結合との競合が示唆される化合物を1つ得ていた。このヒット化合物について、変異体を用いた解析からリガンド結合にも重要な残基がヒット化合物の結合にも重要であることが分かった。また、ヒット化合物の結合様式を解明するべく、新たに6つの類縁体を用いた解析を行ったところ、2化合物についてMST・SPR両方において結合が確認された。さらに、ヒット化合物を含む3化合物について化膿レンサ球菌を用いた増殖アッセイを行ったところ、いずれも増殖抑制が確認された。菌種特異性を確認するために、乳酸菌のマルトデキストリン結合タンパク質であるMalE1に対してもヒット化合物の結合を確認したところ、MSTにおいてレスポンスが見られなくなったことから、これら化合物が化膿レンサ球菌に対して菌種特異的に作用することが示唆された。 2つ目の標的である糖鎖結合タンパク質SPs1696について、SPs1696に対して高い親和性を持つ抗体を取得するため、ウサギを免疫してFab免疫ライブラリーを作製し、ファージディスプレイ法を用いたセレクションを行った。得られた抗体の配列を解析したところ、3クラスターに収束したため、それぞれのクラスターから1クローンずつ選択して発現精製し、解析に用いた。2クローンが加水分解部位をもつドメインに、1クローンが糖結合ドメインに結合することを確認したが、糖との競合および加水分解効率の変化は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り2つの標的タンパク質に対して抗体や低分子化合物のスクリーニング・セレクションを順調に進めた。SPs0871に対しては化膿レンサ球菌を用いた増殖アッセイでも効果を発揮する化合物の取得に成功した。この結果は、以前に取得していたマルトデキストリン結合を阻害するVHHが菌の増殖を抑制できなかったことから、モダリティによって菌体への活性が異なることを示しており、化膿レンサ球菌に対する機能阻害分子の設計指針の提案に繋がるものである。SPs1696に対しては様々なライブラリーから抗原特異的に結合する抗体を取得しており、菌体を用いたアッセイにより、化膿レンサ球菌への影響を評価する段階である。
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今後の研究の推進方策 |
SPs0871に対する化合物に関しては、より低い濃度でも増殖アッセイにおいて効果が発揮できるよう、低分子化合物の結合様式の解明を行い、親和性を上げる改変を行っていく。 SPs1696に関しては、化膿レンサ球菌を用いた接着アッセイの系を構築し、取得した抗体の評価を行う。 標的タンパク質の局在やモダリティの違いによって菌体に対する阻害剤の活性が変わる原因として、化膿レンサ球菌が防御機構として持ち、ヒアルロン酸から成る莢膜に注目している。この点に関して、ヒアルロン酸分解酵素を用いるなど、今後より詳細な解析を行うことで、化膿レンサ球菌に対する機能阻害分子の設計指針の提案の一助とする。
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