研究課題/領域番号 |
22KJ1218
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補助金の研究課題番号 |
22J12760 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
奧村 文音 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2022年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
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キーワード | フレーブニコフ / マチューシン / ロシア・アヴァンギャルド / 有機的潮流 / コスミズム / 有機的文化 |
研究開始時の研究の概要 |
ロシア・アヴァンギャルド芸術において、万物の相互連関性を重視し、ひとつの生命体として宇宙を捉えようとする「有機的文化」と呼ばれる流れがあった。「有機的文化」は芸術の諸領域にまたがる現象であるが、本研究では詩人ヴェリミール・フレーブニコフの作品分析を通じ、文学におけるこのような動きの一端を明らかにする。多面的な詩学・思想で知られるフレーブニコフをあらためて「有機的文化」という文脈の中に置いててみることで、一見雑多とも思われるその詩的世界を新しい角度から見ることができると思われる。
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研究実績の概要 |
採用期間全体を通じ、ロシア・アヴァンギャルドにおいて「有機的潮流」が形成されてきた土壌について調査しつつ、フレーブニコフのテクスト分析を行うという二本立てで研究を進めた。初年度は「有機的文化」の中心的人物であるM. マチューシンや彼の直接の弟子たちを中心に調査しつつ、20世紀初頭における自然科学と哲学・芸術との接点について多角的に考察することを試みたが、今年度はロシアのコスミズムの伝統と深く関わる芸術家や、その思想的基盤について資料を集め研究を進めることができた。そうした中で、フレーブニコフに基づいた作品も複数手掛けている作曲家・哲学者V. マルティノフ(1946-)の創作や思想に見られるように、「有機的潮流」は現在もなお形を変えつつ発展し続けているということも明らかになった。 また、情勢上の理由でロシアへの渡航は叶わなかったものの、ウズベキスタンのタシケントおよびヌクスにて資料収集を行い、東洋の哲学・神話との関わりという観点からフレーブニコフを論じたP. タルタコフスキ―の著作や、その他ロシア・アヴァンギャルド芸術関連の資料にあたることができた。 フレーブニコフのテクスト分析においては、今年度はとくに「楽器」のモチーフに注目した。というのも、フレーブニコフの作品において「楽器が音を発する」ということは、しばしば世界の定められた運命が実現されていくことを象徴し、それがやがて、「万物が共鳴し合い、その総体として律動する宇宙」という、「有機的潮流」の根幹をなす考え方に関わってくるからである。なおこの内容は、日本ロシア文学会全国大会にて発表予定であったが、体調不良により参加辞退となったため、楽器そのものよりも物理現象としての「音」「振動」にフォーカスした形で、論文『震える宇宙:V.フレーブニコフにおける「弦」と「振動」のモチーフ』にまとめ直した。
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