研究課題/領域番号 |
22KJ1252
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補助金の研究課題番号 |
22J23857 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分21050:電気電子材料工学関連
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
秦 東益 東京農工大学, 大学院工学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | エピタキシャル薄膜 / 超伝導 |
研究開始時の研究の概要 |
次世代超伝導材料として実用が期待される鉄系超伝導体Ba1-xKxFe2As2の物性、とくに超伝導パラメータのチューニング、及び電流輸送特性の理解を目的とする。 分子線エピタキシー法によって、Ba1-xKxFe2As2エピタキシャル薄膜を作製し、成膜温度や組成制御、基板の格子定数を変化させることによる物性変化を調べる。また、2枚の単結晶基板から構成されている単一粒界を有するバイクリスタル基板を使用して、粒界における微細構造や輸送特性を解明する。 実験を通して鉄系超伝導体の高臨界温度化や臨界電流特性の理解することで、材料の実用化に近づけたい。
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研究実績の概要 |
主に以下の二つの実験を行った。 一つ目は、酸化物基板上へのBa1-xKxFe2As2のエピタキシャル成長である。過去の実験から、フッ化物基板上に直接蒸着することではエピタキシャル成長する一方で、MgO(001)基板やサファイア基板などの代表的な酸化物基板上ではエピタキシャル成長しないことが分かっていた。入手可能な全ての酸化物基板上への直接成膜を試みたが、エピタキシャル薄膜は得られなかった。 そのため、酸化物基板上にバッファ層(中間層)を導入することを検討した。同じ鉄系超伝導体で良好なエピタキシャル成長が報告されているCeO2やFeをバッファ層として導入したが、エピタキシャル成長しなった。次に、高温で酸化物基板上に成膜が可能であるBaFe2As2をバッファ層にすることを検討した。MgO(001)基板上に設定温度上限である720℃でBaFe2As2バッファ層を成膜した後、400℃まで降温後Ba1-xKxFe2As2を成膜した結果、エピタキシャル成長した。試料は、最高で39.8 Kの高い超伝導転移温度を示した。また、断面透過型電子顕微鏡観察より、BaFe2As2バッファ層とBa1-xKxFe2As2が原子レベルで整合していることが確認され、バッファ層がエピタキシャル成長において重要であることが確認された。磁化測定より見積もられた臨界電流密度は単結晶を上回る3.9 MA/cm2であった。 二つ目は、MgOバイクリスタル基板上へのBa1-xKxFe2As2エピタキシャル薄膜の作製である。酸化物基板上へのエピタキシャル薄膜の作製が可能になったため、バイクリスタル基板上へエピタキシャル薄膜を成膜し、粒界特性の解明を試みた。基板の[001]方向にそれぞれ6°, 13°, 24°, 30°回転して圧着されたバイクリスタル基板上へのBa1-xKxFe2As2エピタキシャル薄膜の作製に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
酸化物基板上へのバッファ層を検討する過程に計画以上に時間を要した。特にFeは高温で成膜すると微細構造が島状になり、CaF2は基板によって配向面が異なり、成膜温度を最適化する必要があった。また、MgO基板上へBaFe2As2バッファ層を導入する際に、最適なバッファ層の膜厚を知るために、膜厚の異なるBaFe2As2薄膜を準備したことがあった。MgO基板上に成膜した膜厚の異なる複数枚の試料上に同時にBa1-xKxFe2As2の成膜を試みたが、二回も成膜に失敗した。その後、原因を探すために実験をした結果、BaFe2As2を一度大気に曝したら、真空中でのアニールでも劣化することが分かった。これからは起こりうる可能性を予想した上で、実験計画を立てようと思う。 バイクリスタル基板上への成膜では、共同研究先へ測定を依頼していることもあり、結晶性の悪い試料を作製してしまったことがあった。共同研究先から試料提供の依頼を急いでしまい、試料作製装置の状況が最適でないときに成膜を行ったためであった。その結果、バイクリスタル基板上の試料の実験が半年以上遅れてしまった。今後は、このような長期的な影響を考慮しながら、実験計画を立てていきたいと思う。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、試料作製装置の状況次第で実験内容を考え、その時に最適な実験を行っていきたいと思う。実験計画していたバッファ層の膜厚を変化させることだが、一度大気に曝すと劣化することが分かったため、まずは様々なフッ化物基板上への成膜を行っていきたい。それにより、ドープ量依存性や基板の格子定数の依存性を調べたいと思う。また、バイクリスタル基板への実験も試料作製装置の状態が良いときに進めていきたい。
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