研究実績の概要 |
まずは今年度の実績について述べる。今年度は従来のモデルの拡張を実施した。従来のモデルでは腎臓と肝臓の臓器マッチングにおいて、1対1のマッチングのみを考えていた。具体的には、ペアA,B,Cの3ペアがいたときに、AとBの間でマッチしている場合は、CがAやBとマッチすることはないようなマッチングモデルのみを考慮していた。 今年度はこれを拡張し、AとBの間のみならず、A,B,Cの3ペア間でのマッチングを許す形式での研究を実施している。これにより、最もシンプルな例では3ペアのみが存在するようなシンプルなケースにおいて、移植件数の増加が期待できる。 実際のところ、どの程度、どのような形で移植件数が増加し得るのかは非常に重要な疑問の一つである。結論を先に述べると、今回のモデルでは、単に移植件数が増加し得るだけでなく、従来の手法では血液型や臓器の需給などから、理論上移植を受けることが不可能なペアにも移植の機会を与えることが判明した。本研究で検討しているモデルでは、理論的には任意のペアが移植の機会を与えられると言える。具体的なアルゴリズムについては今後の課題とする。 研究機関全体を通じで、2つの異なる臓器を同時に扱うようなモデルの考案、並びに複数の公理を満たすアルゴリズムの提案を行った。パレート効率性や耐戦略性、個人合理性を満たすアルゴリズムの考案を通じて、異なる臓器を同時に扱うようなケースでも効率的な配分が実現可能だと明らかになった。また、本テーマが持つ倫理的な課題についても検討を行っている。
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