研究課題/領域番号 |
22KJ1288
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補助金の研究課題番号 |
21J22878 (2021-2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2021-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分27030:触媒プロセスおよび資源化学プロセス関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
高畠 萌 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2023年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2022年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2021年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
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キーワード | アルカン / 求核剤 / 脱水素カップリング / 白金 / 固体酸 / ベンゼン |
研究開始時の研究の概要 |
アルカンの有用物質への転換は非常に重要であるとされていることから、本研究ではアルカンの脱水素カップリング、特にアルカンとベンゼンの脱水素カップリングを選択的に進行させる触媒の開発を目的とした。脱水素カップリングは水素の再結合のステップが鍵であり、一つの活性点で生成した水素原子が別の活性点で再結合するという水素の逆スピルオーバー現象が応用できると考えられる。この現象を利用した、高効率で目的生成物を得る触媒の開発及び触媒の構造解析を行う。また、資源的に豊富であり有効活用が期待されるメタン等の低級アルカンの利用や、精密有機合成へ向けて種々の求核剤へのアルカンによるアルキル基導入反応へと展開していく。
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研究実績の概要 |
アルカンの有用物質への直接転換は資源の有効利用等の点から非常に重要であるとされている。本研究では、アルカンとベンゼン等の求核剤との脱水素カップリングによるアルキル基の直接導入を目的とした。脱水素カップリングは水素の再結合のステップが鍵の一つであり、一つの活性点で生成した水素原子が別の活性点で再結合するという水素の逆スピルオーバー現象が応用できると考え、この現象を利用した混合触媒系の開発を現在まで行ってきた。今年度は、[1] 固体酸と担持金属の混合触媒の様々なアルカンと求核剤の脱水素カップリング反応への適用、[2] 反応前後の触媒構造解析や様々な実験、測定による反応機構の調査、[3] 触媒調製法等の最適化によるより高活性な触媒の探索を試みた。 これまでに高活性であることが分かっている担持白金と固体酸の混合触媒を用いることで、アルカンによる種々の求核剤へのアルキル基の導入が可能であることが分かり、本触媒系は幅広い基質適応性を持つことが分かった。 反応前後の触媒構造解析は、XRDやXAFS、TEM等を用いて行い、担持白金の本反応における活性種は0価の粒子でありその粒径が反応活性に影響を与えることがわかった。また、様々な実験や測定等から担持白金は固体酸によるアルキル化反応を促進する効果があることが示唆され、本研究において提案する水素の逆スピルオーバーを利用した反応促進機構であることを強く支持している。 白金粒子の粒径が反応速度に影響を与えることから、触媒調製法及び担体調製法を最適化することで、白金粒子の微粒子化に成功し、反応活性の向上を可能にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
アルカンの有用物質への直接転換は資源の有効利用等の点から非常に重要であるとされている。本研究では、アルカンとベンゼン等の求核剤との脱水素カップリングによるアルキル基の直接導入を目的とした。脱水素カップリングは水素の再結合のステップが鍵の一つであり、一つの活性点で生成した水素原子が別の活性点で再結合するという水素の逆スピルオーバー現象が応用できると考え、この現象を利用した混合触媒系の開発を現在まで行ってきた。今年度は、[1] 固体酸と担持金属の混合触媒の様々なアルカンと求核剤の脱水素カップリング反応への適用、[2] 反応前後の触媒構造解析や様々な実験、測定による反応機構の調査、[3] 触媒調製法等の最適化によるより高活性な触媒の探索を試みた。 これまでに高活性であることが分かっている担持白金と固体酸の混合触媒を用いることで、アルカンによる種々の求核剤へのアルキル基の導入が可能であることが分かり、本触媒系は幅広い基質適応性を持つことが分かった。 反応前後の触媒構造解析は、XRDやXAFS、TEM等を用いて行い、担持白金の本反応における活性種は0価の粒子でありその粒径が反応活性に影響を与えることがわかった。また、様々な実験や測定等から担持白金は固体酸によるアルキル化反応を促進する効果があることが示唆され、本研究において提案する水素の逆スピルオーバーを利用した反応促進機構であることを強く支持している。 白金粒子の粒径が反応速度に影響を与えることから、触媒調製法及び担体調製法を最適化することで、白金粒子の微粒子化に成功し、反応活性の向上を可能にした。 また今年度において報告者は、2件の国際学会における学会発表を行い、そのうち1件でポスター賞を受賞した。以上の研究結果から、本研究は現在まで当初の計画以上に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
(a) 触媒調製法等の探索による混合触媒の最適化 (b) メタンやエタン等の低級アルカンへの展開: シェールガスの有効活用の観点から、メタンやエタンの化成品原料への直接転換は大きなインパクトがある。本研究では、比較的長い炭素鎖を持つアルカンによるアルキル化反応の知見を低級アルカンへと活かすことができると考えられる。そこで、基質をメタンやエタンへと変更し、高級アルカンにおける触媒設計を参考に高活性な触媒を探索する。 (e) 他の脱水素反応への応用: 脱水素反応は、燃料以外の利用法に乏しいアルカンの高付加価値物質への転換において重要な反応である。また、副生成物である水素は、近年エネルギー源として注目されている。本研究の目的である、水素の逆スピルオーバーを利用した触媒反応場は、種々の脱水素反応にも適応が可能であると考えられる。そこで、本研究の触媒設計をアルカン同士の脱水素カップリング反応や、合成学的に有用な種々の求核剤とアルカンとの脱水素カップリング反応等に適用することで、高活性な触媒の実現、ファインケミカルズ合成への展開、反応促進機構の解明等に応用できると思われる。
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