研究課題/領域番号 |
22KJ1291
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補助金の研究課題番号 |
22J00022 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分11010:代数学関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
室谷 岳寛 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 遠アーベル幾何学 / エタール基本群 / Grothendieck予想 / 双曲的曲線 / 絶対Galois群 / 混標数完備離散付値体 / Kummer忠実体 / 有限体の代数拡大体 |
研究開始時の研究の概要 |
代数多様体(多項式で定まる図形)のエタール基本群は、「幾何」と「数論」が絡み合ってできた興味深い対象である。数学者Grothendieckは、「遠アーベル多様体」(未定義語)なるある種の代数多様体が、そのエタール基本群から「復元」されるであろうと予想した。多くの場合にこの予想は肯定的に解決されているが、その一部の研究は、完備離散付値体という体(四則演算ができる体系)の「分岐」という現象が当該分野に深く関わることを示唆している。本研究課題では、この「分岐」というキーワードのもとで当該分野における様々な未解決問題を横断的に扱い、「遠アーベル多様体」の適切な定義(当該分野の一つの終着点)に迫る。
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研究実績の概要 |
今年度はまず,前年度末頃から行ってきた有限体の(無限次の)代数拡大体の遠アーベル的性質についての研究成果を論文にまとめ,プレプリントとして公開した(論文投稿中).具体的な内容としては,有限体の代数拡大体がKummer忠実であるための(体の絶対Galois群に関する)必要十分条件を与えたほか,有限体の代数拡大体上の双曲的曲線のエタール基本群及びtame基本群についても研究し,後者から幾何的部分群を群論的に復元することに成功し,前者についても部分的な結果を得た.これにより玉川安騎男氏・更科明氏による有限体の代数閉包上の種数0及び(1,1)型の双曲的曲線に対する弱同型版のGrothendieck予想の拡張が得られた. このほか,既約とは限らない特異曲線のエタール基本群の性質の研究も行った.具体的には, 有限体や数体,p進局所体,一般化劣p進体,有限体上有限生成体のperfectionなどの体上の被約かつ固有な特異曲線について,その既約成分の正規化が双曲的である場合に,その正規化の同型類が(適切な形で)特異曲線のエタール基本群から決定されることを示した.さらに,有限体上の必ずしも固有でない被約な特異曲線に対しても,その正規化の各既約成分が双曲的である場合に,類似の結果を示した.これらの結果は論文にまとめて近日公開予定である. 研究発表としては,上記の有限体の代数拡大体の遠アーベル的性質について,2つの研究集会で講演を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の主な研究成果は上記のように,有限体の代数拡大体の遠アーベル的性質の研究と,特異曲線のエタール基本群の性質の研究の2つである.前者について,有限体やその代数拡大体は(完備)離散付値体ではないが,当該研究と研究代表者による過去の結果を組み合わせることで,混標数完備離散付値体で,Kummer忠実なものの新たな例を構成できるなど,本研究課題の趣旨に適った結果が出ている.また,後者についても,完備離散付値体上の遠アーベル的結果を含むものである.このように,当初の想定とはやや方向性が異なるものの,当該分野においてそれ自体非常に興味深く,また本研究課題の趣旨にも沿った結果が得られているという意味で,本研究課題はおおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては,まず,剰余体が必ずしも完全でない完備離散付値体の(Abbes-斎藤による)分岐フィルトレーション付き絶対Galois群の遠アーベル的性質の研究を進める.また,近年,体のKummer忠実性を拡張・一般化した概念が定義・研究されており,この性質の研究にも取り組んでいく.
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