研究課題/領域番号 |
22KJ1307
|
補助金の研究課題番号 |
22J13893 (2022)
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分60020:数理情報学関連
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
東 悟大 東京工業大学, 情報理工学院, 特別研究員(PD)
|
研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
|
キーワード | 多項式最適化 / 二次制約付き二次計画問題 / 狭小性 / ランク1 / ランク1行列補完問題 |
研究開始時の研究の概要 |
多項式最適化問題の一部である二次制約付き二次計画問題に対して、半正定値計画問題によって大域的最適解を計算できるための理論的条件の解析が進められている。一般の多項式最適化問題の求解は難しいことが知られているが、変数変換を器用に扱うことで特殊な疎性構造を持った二次制約付き二次計画問題として定式化できる。本研究では、この事実に基き、二次制約付き二次計画問題に対する理論を多項式最適化問題へ応用させ、大域的最適解を計算できる多項式最適化問題の条件を明らかにしながら、それを活用した新しい大域的解法を検討する。また、構築した計算方法をソフトウェアとして実装する。
|
研究実績の概要 |
本研究は多項式最適化問題の正確な最適解を計算できる条件の解析を通じて、多項式最適化問題の計算方法の構築を目指している。本年度は研究計画に従い、多項式最適化問題の正確な最適解を計算できる条件の解明について取り組んだ。 まず、多項式最適化問題に関して、対応する二次制約付き二次計画問題を正確に解くことができるかを比較しながら予備的な計算機実験を行った。多項式最適化問題を二次制約付き二次計画問題へ変換する際にその手順は一つに定まらず、対応する二次制約付き二次計画問題は複数存在することから、この実験はそれらの問題の計算可能性と性質を比較することが目的である。変数や制約の数が少ない問題であっても、最適解を計算できる問題へ定式化するための規則性が観測されなかったことから、全ての多項式最適化問題を一括で扱える理論的条件の不適当さが示された。 また、2次の多項式最適化問題として定式化可能なランク1行列補完問題に対しては、前処理後の2階のLasserre階層の双対問題を考えたとき、常に退化次数が1である最適解を構成できることを示した。近年提案されたランク1行列補完問題を正確に解くための条件では、鎖構造が連結していることを用いて、双対解の退化次数が1になることを示すことが鍵となっている。本研究の結果は鎖構造を必要としておらず、既存研究の条件を更に緩和するために活用できる。実際に、斉次の等式制約を二乗することで不等式制約に置きかえることによって、鎖構造という条件を無視できることが予備実験で確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
多項式最適化問題全体に対して正確な最適解を計算できる条件の導出を試みたものの、変数の次数に応じて、対応する二次制約付き二次計画問題の数が指数的に増加することから、その困難さが明らかとなった。この結果により、考える問題を多項式最適化問題の一部であるランク1行列補完問題へ縮小する必要があった。その一方で、ランク1行列補完問題に対する解析が進んでおり、理論的に重要な双対解の退化次数の評価やその構成方法について理論的な証明をすることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度の研究においては、2階のLasserre階層の双対解の退化次数という観点から、特殊な多項式最適化問題であるランク1行列補完問題を正確に求解できる条件の解析を進めた。ランク1行列補完問題に対する結果としてはまだ十分ではないため、まずは、既存研究において必要であった鎖構造という条件を取り除くことができることの理論的な保証を与えることを目指す。具体的に、本研究においては既存研究よりも弱い計算可能性のみを考えれば十分なので、鎖構造が使用されている2箇所を修正することによって実現する予定である。さらにこの結果を元にして、研究目的の2段階目である計算手法の構築と計算機実験を行う。 併せて、ランク1行列補完問題よりも広い問題、もしくは多項式最適化問題の異なるサブクラスに属する問題に対して、計算可能性条件の拡張を行う。ランク1行列補完問題の解析の中で、特定の条件下においては多項式最適化問題の制約条件を少し変化させても正確な計算可能性に影響を与えないことが明らかになってきた。この結果を元にして、周辺の多項式最適化問題の計算可能性の解析を進めていく。
|